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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は17日、金正恩党委員長が李雪主(リ・ソルチュ)夫人とともに、江原道(カンウォンド)の観光リゾート「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設現場を視察したと伝えた。

金正恩氏は現場で、「わが国の景色がよくて美しい海岸に文化休息の場を立派に建設して人民が思う存分享受できるようにするのは、朝鮮労働党が久しい前から構想してきた事業であり、自身が最もしたかった事業の中のひとつであった」と述べ、来年の朝鮮労働党創立記念日である10月10日までに完成させるよう指示したという。

しかし果たして、金正恩氏が指示した期間内に完成するかは微妙だ。

韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)によれば、今年1月10日に始まった建設工事は当初、70回目の国慶節(建国記念日)を迎える今年9月9日までの完成を目標としていたという。しかし金正恩氏は、5月25日にこの現場の現地指導を行った際、完成目標を来年4月とするよう指示したことが北朝鮮メディアの報道によって明らかにされている。

ということは、今回の視察で来年10月までの完成が指示されたことで、期限が2回にわたり延期されたことになる。

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LKPによれば、その背景にあるのは劣悪な労働条件だ。LKPは、この工事には刑務所の囚人たちが動員されているとし、「1月から今まで、葛麻地区の工事現場では7000人、月単位では1000人が死んでいる」とする刑務所幹部のコメントを伝えている。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

北朝鮮では、無理な工期のゴリ押しによる大量死亡事故が繰り返されている。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

朝鮮中央通信が公開した今回の視察時の写真の中にも、事故につながりそうな要素を収めた「恐怖写真」がある(下)。金正恩氏の背景に写っている建設中の建物の足場が、どうやら木材で組まれているのだ。これは、先立って公開された三池淵(サムジヨン)郡の建設現場の写真の方がわかりやすいだろう。

(参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

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このような安全対策の欠如により、現場では死亡事故が多発しているのだ。

金正恩氏がこの元山葛麻の開発に力を入れるのは、国連安保理により制裁指定されていない観光業を盛り上げ、外国人観光客を誘致することで、経済的な難局を乗り切るためであると思われる。

現状、北朝鮮の非核化は進展しているとは言えず、制裁が解除される日が近いとは思えない。それまでの日々に、いったいどれだけの犠牲が生まれるのだろうか。

(参考記事:「事故死した98人の遺体をセメント漬け」北朝鮮軍の中で起きていること

元山葛麻海岸観光地区の建設現場で現地指導する金正恩氏(2018年8月17日付朝鮮中央通信)
元山葛麻海岸観光地区の建設現場で現地指導する金正恩氏(2018年8月17日付朝鮮中央通信)

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記