金王朝の弱点「恥部」の研究(2)

韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使が近著『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)で明かしているところによれば、朝鮮労働党の中枢機関である組織指導部には、「権力層に仕える女性」を選抜、管理する特別なセクションがある。

その名も「5課」。中央から道・郡・市などの末端にいたるまで組織網を張り巡らせ、14~16歳の美少女を選抜し、各種の専門家に養成するのだ。選抜された女性たちは、「5課対象」「5課処女」などと呼ばれる。朝鮮語で「処女」は若い女性や未婚女性を指す言葉で、日本語の「乙女」のニュアンスに近い。

日本でよく知られている「喜び組」も、5課が管理する女性たちの中から選ばれるのだ。

5課の存在は、以前から北朝鮮国民の間で広く知られていた。太永浩氏によれば、北朝鮮の庶民は従来、娘がこのような対象に選抜されることを喜んでいたという。名誉でもあるし、選抜された少女の家庭には様々な恩恵が与えられるからだ。しかしそれも、彼女らが権力者によってもてあそばれている実態を知らなかったからにほかならない。

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それでは具体的に、「喜び組」にはどのような女性が選抜されるのか。韓国紙・朝鮮日報が2014年1月26日、脱北者らの証言を交えて伝えたところでは、その募集要項だけでも100ページ以上あるという。

「喜び組」の場合、身長162センチ以上の女性で、顔の形は卵形、また目尻がつり上がっていてはならない。顔色があまりに白くても駄目で、体に傷があってもいけない。額と目の間のサイズまで全て定めてあるほどだ。金正日総書記の時代には、精密な定規で顔のサイズを測って選んだが、金正恩党委員長の時代になってからは、顔の形が卵形でありさえすれば合格点を付けるという。

同紙によればまた、背が低かった金正日総書記は、女性なら160センチ以上、男性は170センチ以上から選抜したが、父親より背が高い金正恩氏の場合、女性なら165センチ以上、男性は175センチ以上を選んでいる。

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チェックされるのは、外見だけではない。同紙は次のように伝えている。

「(喜び組)選抜で最も重要と考えられているのが、まさに性経験の有無だという。喜び組に選ばれた女性は、北朝鮮の高官層が利用するポンファ診療所に行き、そこで服を全て脱いで傷がないかどうかや性経験の有無を検査されるという。処女膜が裂けていないかどうかを検査する際、ハードなスポーツをしていて自然と裂けたケースは問題にされないが、性経験によって裂けていた場合は不合格になる」

まさに女性らの人格を無視した行為と言えるが、首都・平壌に在住する女性らはある時期から、こうした厳格な基準を逆手に取り、男性と交際したりわざと顔に傷を付けたりするようになったという。5課によって選抜された女性がどのような人生を強いられるかが、徐々に知れ渡るようになったからだ。

(参考記事:「エリート女学校長は少女達を性の玩具として差し出した」北朝鮮幹部が証言

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記