朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、部隊内において韓流文化の取り締まりを繰り返しているが、一向に効果が上がっていない。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、朝鮮人民軍の幹部や兵士の間で韓流ドラマや映画を見たり、流通させたりする「事件」が頻発していることを受け、当局は取り締まり組織「109グルパ(グループ)」を各部隊に派遣して、検閲(取り締まり)を行っている。

109グルパは総参謀部、総政治局、保衛局から集められた人員で構成され、抜き打ちの検査を行っている。違反者に対してはその罪状に応じて厳罰を下すとの指示が下された。

各部隊の指揮官と政治将校は、参謀部、政治部、保衛部のイルクン(幹部)からなる独自のグルパを立ち上げ、兵士と家族を対象にした自主的な取り締まりを始めた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、道内の国境警備隊と軍部隊では、軍官(将校)と兵士が民間人にカネを払い、その民間人宅で韓流ドラマや映画を見ることがよくあったが、取り締まりの強化でそのような商行為は姿を消した。109グルパの取り締まりの対象に「カネを受け取って軍官、兵士に韓流を見せた民間人」も含まれているからだ。厳しい取り締まりに街全体が緊張状態に置かれている。

しかし、いくら取り締まりをしようと焼け石に水だ。

中国からは、USBメモリやSDカードに保存された韓流ドラマ、映画、K-POPのソフトが次から次へと流入してくる。韓国や米国からは複数の北朝鮮向けラジオ放送が行われている。その気になれば、北朝鮮国民が韓流に接することは難しくないのだ。

(参考記事:金正恩氏激怒映像より韓国「ラジオ放送」を聴く北朝鮮庶民

そればかりか、韓国のテレビを直接受信する人も少なくない。

韓国に接している北朝鮮の黄海道(ファンヘド)、江原道(カンウォンド)や、平壌、平安南道(ピョンアンナムド)、咸鏡南道(ハムギョンナムド)などでは、韓国のKBSテレビが受信できる。

さらに、ソウルから北に300キロも離れた平安北道博川(パクチョン)郡のある軍官の家で、KBSテレビを見たとの脱北者の証言がある。つまり、北朝鮮のかなり広い範囲に渡って韓国のテレビが受信可能ということを示す。

「そこの家族は、隠すこともなく韓国のテレビを見ていた。韓流ドラマなどの視聴を取り締まる『109常務』は、軍の敷地に立ち入ることはできない。それを利用して軍人家族は、心置きなく韓国のテレビを見ていた」(脱北者の証言)

そもそも、韓流ドラマや映画を1度も見たことのない北朝鮮軍幹部が、どれだけいるのか。取り締まりに当たる面々の本気度も、決して高いとは言えないだろう。