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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は17日、北朝鮮で各種の強行犯が増えていると伝えた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋がRFAに語ったところでは、「最近、社会全体で殺人、強盗、強姦などの犯罪行為が増えており、犯罪形態と手法も多様で巧みになっている」という。

情報筋はまた、最近の犯罪の特徴について「男性よりも女性による犯罪が急激に増えてきた。相手が女性だと思って甘く見ていたら、いきなりやられてしまう例が多い」と指摘した。

(参考記事:裏社会の北朝鮮女性たち…殺人さえ厭わない「女性犯罪組織」が暗躍

しかしこれまでにも、女性の犯罪増加が指摘されたことはあった。2015年の8月15日、北朝鮮北部の清津(チョンジン)市で、1日に3件も殺人事件が発生したが、北朝鮮捜査当局は、「女性犯罪組織」が緻密な計画に基づいて犯行に及んだと見ているという。背後に見え隠れする「女性犯罪組織」は、麻薬、宿泊、運送、貿易、港湾業務など「ウラ事情」に精通しているとされた。

(参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

良く知られた「喜び組」の存在が象徴するように、北朝鮮社会には伝統的に男尊女卑が根強く残っている。それにも関わらず女性犯罪が急増している背景には、今や「北朝鮮経済の主役は女性」という事情がある。

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1990年代後半から北朝鮮を襲った大飢饉は、社会主義経済を粉砕したが、その後、実質的な市場経済に移行するなか、女性達は家族を養うために、商売をはじめた。当初は生活を支えるために、やむをえず「売春」に走る女性も多かった。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

しかし現在では、資本を蓄え、市場経済の「トンジュ(金主)」として振る舞う女性も少なからず出てきている。北朝鮮の男性は、国営企業などの職場に縛り付けられ、自由に商売をすることができない。それに比べ、行動の自由度の高い女性らは、才覚次第でいくらでも成功を手にできるのだ。

最近になって女性による犯罪が増えているというのも、それだけ北朝鮮女性の自我が強まっているためだろう。

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あるいは、まだまだ女性に不利な要素が社会に多く残っていることがストレスとなり、犯罪を誘発しているのかもしれない。

(参考記事:女性からの「死の復讐」に怯える北朝鮮のバツイチ男性

いずれにせよ、女性に対する待遇を改めない限り、北朝鮮社会の発展はないのではないか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記