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かつて、北朝鮮では「資本主義的な交通手段」だとして批判されていたタクシー。そんなタクシーが首都・平壌に登場したのは1992年のこと。今では1000台ものタクシーが平壌で運行されている。また、2010年代に入ってからは、地方都市でもタクシーの運行が始まった。

トンジュ(金主、新興富裕層)が、中国から取り寄せた車を国営企業の名義で登録して、営業運転を行う形だったが、最近になって、名義が市の人民委員会(市役所)に移管された。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、道内の順川(スンチョン)市の人民委員会は昨年、タクシー事業所を設立した。それに伴い、今までは国営企業に所属して営業を行っていたタクシーの名義が、市のタクシー事業所に移管された。

ここに所属していなければ、営業運転はできなくなった。月末に収益を納めるのは、今までと変わらない。

この措置について、一部のドライバーからは「国営企業所属で営業しても違法ではないのに、なぜわざわざ人民委員会の名義に変えなければならないのか」と不満をあらわにしている。情報筋は言及していないが、おそらく名義の移管により収入が減少したのだろう。この措置は、地方政府の税収を確保するための中央政府の指示によるものだと情報筋は説明した。

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別の情報筋によると、数年前までは数台に過ぎなかったタクシーが今では数十台まで増えたが、国営企業の幹部は、ドライバーに名義を貸し与える見返りに、収益の一部を横領していた。

そこに目をつけたのが、予算不足に悩んでいた市の人民委員会だ。「税収」は、市場を利用する商人から取り立てる市場管理費ぐらいだ。それも、1週間でたったの3500北朝鮮ウォン(約46円、2016年11月)だ。そこで、安定的な「税収」が期待できるタクシーを市の所属に移管したのだ。

それだけではない。人民委員会の商業部は、個人経営の食堂、雑貨屋、美容室を登録させ、商業管理所所属という看板を掲げさせる。一見して国営に見えるが、実体は個人経営という一種の名義貸しだ。

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利益の1割の事実上の税金として納めることで、安全に営業できるようにするというものだ。もし税金を払わないでも、1〜2ヶ月は黙認する。しかし、3ヶ月経って儲かっているのに税金を払おうとしない場合には、営業をやめさせ、設備を没収するなどの措置をとる。

北朝鮮の地方政府が「税収」確保に必死になるのは、公式の税金制度が存在しないことが大きく関係している。

故金日成主席は1974年2月、朝鮮労働党中央委員会第5期第8次全員会議において、古い社会の遺物である税金制度を完全になくすことについて討議、決定することを指示した。それを受けて最高人民会議は同年3月、「税金制度を完全になくすことについて」との法令を発表し、4月1日に世界初の税金のない国になったことを宣言した。この日は「税金制度廃止の日」に定められている。

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他の国の地方自治体なら地域住民から市民税などを徴収し、予算にあてるが、北朝鮮の場合は政府からの資金で運営されていた。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を境にして、その資金が途絶えてしまったのだ。そのため、市民から使用料、募金などの名目で、法的根拠のないカネが税金と同様に、頻繁に徴収されるのだ。

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