北朝鮮当局は、今年1月から「非社会主義、反社会主義」、つまり当局が考える好ましからざる行為に対する取り締まりを強化してきた。

あまりにも対象が広く、生活に困窮する人が続出したことから、各地で国民が抗議する事態となったことを受け、両江道(リャンガンド)では取り締まりが事実上中止に追い込まれたと、現地のデイリーNK内部情報筋は伝えた。

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取り締まりの中止には地域差、時間差などがあるのか定かではないが、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は今月3日、取り締まりが未だに大々的に繰り広げられていると述べた。

「最近、当局が住民に対して『帝国主義の思想文化的浸透を徹底して排撃しよう』と宣伝を行っている。これは非社会主義と反社会主義の運動を展開し、資本主義退廃文化を根絶しようというものだ」(情報筋)

朝鮮労働党機関紙・労働新聞や国営の朝鮮中央テレビは、南北、米朝、中朝と相次いだ首脳会談を大きく報じたが、これを見た国民はこれから訪れるであろう新たな変化に大きな期待を抱いた。

ところが、当局はその流れに逆らうかのように、取り締まりを強化しており、人々の失望は大きいと情報筋は伝えた。

北朝鮮では、カラオケで韓国のK-POPなどを歌うことが一般化していることもあり、取り締まりの強化に多くの人が唖然としており、情報筋は「勤労動員や社会支援でクタクタになっているのに、これぐらいの娯楽も認めないのかと、党中央に対する敵愾心をあらわにしている」と不満が高まっていることを伝えた。

「国営企業が営業していたカラオケがすべて閉鎖されるなど取り締まりが強化されたため、地下室でカラオケを営む個人が現れた。国の機関が公に営んでいたレストランも多くが閉店に追い込まれそうな雰囲気で、人々が歌って踊れるスペースがなくなりつつある」(情報筋)

両江道の情報筋も、非社会主義取り締まりの一環として、カラオケに対する取り締まりが強化され、当局が店に踏み込んだ際にK-POPや中国の歌のカラオケが発見されれば、その場にいた人は全員逮捕され、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送りになっていると述べた。

「労働鍛錬隊送りになったら本当につらい目に遭うということを知りながらも、秘密の場所にカラオケの機械を設置して、資本主義式の歌と踊りを楽しむ人がいる。いくら統制を強化しても、外国の歌と踊りを求める北朝鮮国民を止めることはできない」(情報筋)

RFAの平壌の情報筋は今年4月、「20代の若い女性がデュエットしてくれて、お酌もしてくれる」平壌のカラオケ店が閉鎖に追い込まれたと伝えている。

(参考記事:北朝鮮「美女ぼったくり」カラオケ店に閉鎖命令

上述のカラオケ店では、女性従業員に対する身体接触は禁じられているとのことだが、カラオケ店が売春の温床となっているという指摘は後を絶たない。カラオケに対する取り締まりは、非社会主義の取り締まりとは別に、売春への取り締まりは続けるという当局の意志の現れとも言えよう。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち