朝鮮半島をめぐる情勢が緊張から一転、融和ムードとなったが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の状況は依然として緊張している。軍事的なものではなく、将来が見えないことから来る緊張だ。

先が見えない軍隊生活を終えて、転職しようとしている軍官(将校)が増えていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、軍隊生活の劣悪さと将来の不安から軍服を脱いで民間人に戻ろうとしている軍官が多い。中でも尉官級の除隊希望者が特に多く、軍当局は頭を抱えている。

「若い将校の中で除隊希望者が急増している。昇進できないまま、突然軍隊を辞めさせられ社会に放り出されると、社会的に全く意味のない存在に転落してしまう」(情報筋)

そのため、若いうちに軍を離れて社会に出て経済的な基盤を作りたいと考え、軍をやめようとしているのだ。さもなくば時代に乗り遅れて貧困層に転落するという恐怖感があるのだろう。

軍を辞める口実を作るために、幹部部(将校の人事を担当する部署)の部長や指導員にワイロを渡す。経済的な余裕がない将校は、鑑定除隊(病気で軍を辞めること)を認めてもらうために軍病院に入院し、軍医とグルになって虚偽の除隊鑑定書を提出する。

北朝鮮では軍医も、人民病院の医者もまともな給料をもらえない。生きていくためには不正行為に手を染めるしかないのだが、最も手っ取り早いのが虚偽の診断書作成だ。

中には「なぜ辞めさせてくれないのか」と上官に抗議したり、無断欠勤、さらにはちょっとした犯罪を犯したりして、軍を辞める口実を作ろうする人すらいるという。

辞める人が多いため、末端の部隊では若い軍官が少なくなり、業務遂行に支障が起きているほどだと情報筋は述べた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、同様の現象が起きていることを伝えた上で、「特に最前線の軍団に勤務する軍官の間で辞めようとする人が多い」とし、劣悪な勤務、生活が問題の根底にあると指摘した。

「特に子どものいる軍官は、子どもの将来のために都会に行こうと除隊許可を得るために努力を惜しまない」(情報筋)

軍部隊は山奥にあることが多く、子どもにいい教育を受けさせようにもまともな教育機関がない。教育費を稼ごうにも軍からまともな給料をもらえず、商売で稼ごうにも大規模な市場もない。そんな状況で軍官の社会的地位はダダ下がりし、結婚相手としても人気がないという。

(参考記事:「指揮官が遅刻するから戦闘準備できない」金正恩氏のポンコツ軍隊

軍当局は、若い軍官を除隊を防ぐために思想教育を行ったり、虚偽の書類を使った除隊に対して行政罰を与えたりするなどの対策を行っているが、さほど効果を上げていないと情報筋は述べた。