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北朝鮮当局は今年初めから、「非社会主義的現象」に対する取り締まりを大々的に行っている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、今月12日の米朝首脳会談の直前に、当局は道の機関の幹部たちを集めて政治講演会を行った。その中身は「帝国主義者どもの思想攻勢に抗い、チュチェ(主体)の社会主義のかんぬきをしっかりかけよう」というものだった。引き締め策をさらに強力に推進せよという意味合いだ。

さらに、社会における好ましからざる現象を「非社会主義」と「反社会主義」に分類し、該当する行為を一つ一つ挙げて説明した。

「非社会主義」に当たる行為として挙げられたのが、髪染めと「社会主義気風を乱す退廃的な服装」というものだ。網タイツ、花柄のストッキング、アルファベットの書かれたTシャツの着用などがそれに当たるという。

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これらが市場で売られていれば即座に没収することや、ミニスカート着用者は発見次第、中国人民元で30元(約500円)の罰金刑に処することなど、厳罰方針が伝えられた。

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一方、「反社会主義」に当たる行為として、体制批判と合わせて挙げられたのが、好ましからざる文化コンテンツの利用だ。違法な携帯電話を使った通話、韓流映画やドラマ、K-POP、ラジオの視聴や聴取、色情的な踊りなどがそれに当たり、摘発時には厳罰に処すとの方針も伝えられた。韓流ドラマの視聴を巡っては、ある女子大生が悲惨な末路に追いやられるなど、これまでにも当局の締め付けが続いてきた。

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情報筋によると「色情的な踊り」とは、K-POPアイドルのダンスを指し、首都・平壌では教室ができるほど人気を集めているが、これらも取り締まりの対象だと強調された。ちなみに、われわれからすればより「色情的」に見える「喜び組」のダンスはどうなるのか、という疑問が湧く。

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デイリーNKの内部情報筋は2015年4月に、大学生や教師がアルバイトで個人レッスンを行うことが盛んで、韓国のアイドル「少女時代」のダンスを教える「ダンス教師」もいると伝えたが、改めて禁止令が出されたのは、あれから3年経っても「韓流根絶」ができていないことを表している。

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講演では「109常務」(韓流取り締まり班)の役割を高めるべきということも強調され、住民統制の強化で資本主義的要素にこの地を一歩も踏ませないという言葉で締めくくられた。

このような内容の公演を聞いた幹部たちは衝撃を受け「裏切りじゃないか」という反応を示し落胆したという。つまり、北朝鮮を取り巻く国際的な環境は今後良くなっていくのに、当局は国内で一般国民の意識を麻痺させる方針、つまり愚民政策を取ろうとしていると見ているということだ。

当局が好ましく思わない行為を指す「非社会主義」だが、取り締まりの対象が広範囲に及んでいるため、国民の間から強い不満が続出し、取り締まり緩和の兆しが見えていた。

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今回の講演会は、当局が非社会主義、反社会主義の取り締まりを強化する方針を改めて表明したものだ。北朝鮮における取り締まりというものは、取締官がワイロをせびるネタにしかならない。

一般庶民は、取り締まりの嵐がいつ過ぎ去るのか不安に思い当分はおとなしくしているだろうが、ほとぼりが冷めればまた今までのように非社会主義、反社会主義を満喫するだろう。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記