米国のトランプ米大統領は、12日の北朝鮮・金正恩(キム・ジョンウン)党委員長との米朝首脳会談の後の記者会見で、記者からの質問に「人権問題について提起した」と答えたが、その内容についての詳しい説明はなかった。

トランプ氏に対しては、数多くの人権団体、脱北者団体から金正恩氏に対して「人権問題に言及して欲しい」との要望がなされてきたが、どうやら聞き流されたようだ。

北朝鮮の人権問題は、核問題と並び国際社会から厳しい批判を受けている。他の国では犯罪にならないような行為でも、処罰されることが多い。同時に死刑の執行対象が非常に広く、適用が極めて恣意的だ。

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自由権規約の6条2項は「死刑は最も重大な犯罪についてのみ科することができる」と定めている。国連人権委員会は、そこには反逆、麻薬、兵役拒否、経済犯罪、政治犯罪などは含まれないとして、それらの行為に対する最高刑を死刑とすることは自由権規約違反であると主張している。

北朝鮮刑法は、60条(国家転覆陰謀罪)、63条(祖国反逆罪)、68条(民族反逆罪)などの最高刑を死刑と定めている。また、2007年の刑法附則では、国家財産、資源、軍事施設の破損、略取、密輸、不良的行為、違法な営業などに対する最高刑を死刑にすると定めている。2010年に多少緩和されたが、重罰化傾向が続いていることに変わりはなく、自由権規約に違反した状態だ。

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韓国の政府系シンクタンク・統一研究院が発行した「北朝鮮人権白書2018」は、比較的に最近に韓国にやってきた脱北者の証言に基づき、北朝鮮で数多くの処刑が行われている実態を報告。その対象が上述の者に加えて、韓流ドラマの視聴、流通に広がり、その数が増えていると指摘している。

黄海南道(ファンヘナムド)碧城(ピョクソン)在住で2017年度に脱北した人は、同年2月に麻薬と韓流ドラマの視聴、流通で20人が銃殺されたと証言した。また、別の脱北者は、2015年3月に平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)で、3〜40代男性5人が、同じ容疑で銃殺されたと証言している。

かつては軽い処罰だった韓流ドラマの視聴、流通に対する処罰が強化されたのは、2013年4月に金正恩氏が「録画媒体を見たり売ったりした者は、労働鍛錬隊または教化所(刑務所)送りにせよ」との指示を下してからだ。

通常は3年から15年の実刑判決が下されるが、同年9月には両江道の三池淵(サムジヨン)で、韓流ドラマを見たり、K-POPを聞いたり、売った者は死刑にするという布告があり、実際に見せしめとして処刑が行われたとする証言もある。また、両江道の恵山でも農林大学の学生を含む3人が、麻薬と韓流ドラマの流通に関わったとして銃殺された。

ある女子大生は、韓流ビデオのファイルを持っていたというだけで拷問され、悲惨な運命に追いやられた。

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しかし、取り締まりは骨抜きにされがちだ。

2014年春に、咸鏡北道会寧で韓流映画を見ていたところに踏み込まれた友人は、取り締まり官に3000元(約51800円)のワイロを掴ませもみ消したと脱北者は証言した。この頃から、韓流ドラマ、映画の視聴が一般化し、取り締まりに備えてワイロを用意しておくようになったと、別の脱北者は証言している。

2017年に脱北した40代男性は、金正恩政権になってから公開処刑そのものは減少したが、今では「中で殺すようになった」と述べ、非公開処刑が増加していると証言した。これは2016年に金正恩氏が「公開処刑を禁止する」との指示を下したことによるものと思われるが、非公開にしたからと言って、北朝鮮の人権状況が改善したわけでは全くない。

(参考記事:金正恩氏が「公開処刑を禁止する」と指示…その真意は!?