北朝鮮の金正恩党委員長が、GPS(衛星追跡装置)付きの小型漁船2万隻を今年中に購入せよとの指示を出した。日本海沿岸では昨年から今年の初めにかけて、北朝鮮のイカ釣り漁船とみられる木造船の漂流、漂着が急増したが、それを深刻に受け止めてのことだ。(丹東:カン・ナレ記者)

「対外的な威信に打撃」

指示について証言したのは、中国に派遣された北朝鮮の幹部だ。5月10日、金正恩氏の名義により「朝鮮労働党中央軍事委員会」から下された秘密指令は、当該機関の主要な幹部に伝えられた。

指示文のタイトルは「木造漁船による人的被害で共和国(北朝鮮)の国際的威信が下がる行為を克服することについて」というものだ。金正恩氏が購入を指示したのは「ボリスティック漁船」というものだが、これは「バリスティック」(Ballistic、弾道)と「プラスチック」の造語で、GPS付きで小型のFRP(繊維強化プラスチック)製の漁船を指すものと見られる。

日本海沿岸に漂着した北朝鮮の漁船は、木材をクギで固定しコールタールを縫って水密処理した構造になっている。これだと、船体が波に揉まれているうちにクギが抜け、海上で分解してしまう危険性が大きい。

指示文は、「近年、日本、中国、南朝鮮(韓国)などに漁に出た漁民が、風や波で漂流したり、死亡したりする事故が相次いでいる。これがわが共和国の対外的な威信を深刻に毀損している」と指摘した。つまり、海難事故の多発は国の恥ということだ。

(参考記事:「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」

北朝鮮では、まともな装備を搭載していない木造船で出漁し、命を落とす人が後を絶たない。イカ漁に従事したことのある脱北男性は「毎年、イカ漁の時期には、私の近所だけでも漁に出て帰ってこない人が数十人いた」と証言している。