朝鮮半島をめぐる和平ムードでついつい忘れがちになるが、国際社会の対北朝鮮制裁は、北朝鮮が核兵器、ミサイル開発を進めていた昨年と全く変わらず、未だに史上最強レベルで維持されている。

昨年10月に採択された制裁決議2375号は、国連加盟国に対して北朝鮮労働者の就労許可を更新を禁じている。また、昨年12月に採択された制裁決議2397号は、現在滞在中の北朝鮮労働者を2019年末までに帰国させることを義務付けている。

しかし、金正恩党委員長が訪中し習近平国家主席と初となる中朝首脳会談を行ってから、中国当局は北朝鮮の派遣労働者の受け入れを黙認するようになったようだ。

中国遼寧省の丹東の情報筋は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に「国連の制裁がまだ解除されていないので、中国に滞在する北朝鮮の貿易関係者は、労働者を北朝鮮から中国に送り込むぐらいしか仕事がない」と現状を説明した。労働者派遣も制裁の対象であるため、状況を見ながら10〜20人単位で中国に派遣しているとのことだ。

一方で、同じ中朝国境沿いでも、丹東よりはるかに東にある吉林省延辺朝鮮族自治州の和龍では先月、2〜30代に見える400人もの北朝鮮女性が移動する様子が現地のデイリーNK情報筋に捉えられている。

(参考記事:突如として現れた「北朝鮮女性の大集団」…金正恩氏訪中の影響か

これらの制裁逃れは中朝両国が「黙認」という形で、様々な便宜を図った結果だ。

中国の公安当局はもちろんこのような「制裁破り」を把握しているが、積極的に取り締まったり、国外追放にしたりすることはない。受け入れ側の中国企業が公安当局にワイロを渡すなどのもみ消し工作を行う必要もない状態だ。

丹東市公安局の向かいにある地元資本のレストランでは、今月中旬から北朝鮮の女性従業員10人が働くようになったことを考えると、その「黙認ぶり」がうかがい知れる。

黙認は、入国管理にも及ぶ。

別の情報筋によると、北朝鮮から中国に派遣される労働者は、パスポートではなく、渡江証(通行証)を持っている。これは新義州(シニジュ)市の保衛部(秘密警察)が、市民に限って発行する丹東だけを訪れることができる臨時の通行許可証で、有効期間は1ヶ月以内に規定されている。

情報筋は「朝鮮の海外労働者派遣事業は、金正恩氏の批准を受ける必要のある重要事案」「(制裁が強化された)今年初めから対中労働者派遣は、朝鮮労働党の中央委員会と中国当局の事前の調整がなければ難しいだろう」として、丹東市のみならず、中国の中央政府も黙認しているものとの見方を示した。