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北朝鮮の建国から70年。金日成主席、金正日総書記の下で国を支えてきたのは、「核心階層」と呼ばれる人々だ。その正体は、かつて金日成氏と共に抗日パルチザン闘争を繰り広げたパルチザン出身者とその家族である。忠誠の見返りにポストと裕福な暮らしを与えられた彼らは、「赤い貴族」とも言える存在だ。

その筆頭が、金日成氏の戦友だった崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長の息子、崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党副委員長だ。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

ところが金正恩党委員長が政権に就いてから、崔氏のような一部の例外を除き、核心階層の地位が揺らぎ始めた。時代の波に乗り遅れて、貧困層に転落する人が現れたのだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、パルチザンの血筋の知人からこんな話を聞かされた。

「今月の配給はいつもの半分だけだった。すでに独立している息子たちの配給も自分がもらっていたが、その分は削られてしまった」

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江原道(カンウォンド)の内部情報筋も同じような話を聞かされた。

「今年の太陽節(4月15日の金日成氏の生誕記念日)には、食糧配給20日分、豆もやし300キロ、食用油と酒1瓶ずつ、砂糖500グラム、お菓子400グラムの配給を受け取ったが、今月に入ってからは何ももらえていない」

このように、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の頃ですら十分な量が与えられていた食糧配給が、徐々に減らされているというのだ。体制から以前のように厚遇されていないことに加え、国際社会による経済制裁の影響が大きいようだ。

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貿易のほとんどがシャットダウンされ、パルチザン家庭への配給ができなくなった北朝鮮の中央政府は、その責任を地方政府に押し付けた。財政状況が悪いのは地方政府とて同じ。それで配給を減らすしかなくなったというわけだ。

「核心階層への物資配給は、国の財政にまだ余裕があった時代には、各道の党支部が行っていた。それが今は、下位にある市や郡に押し付けられている。市・郡の財政状況は中央より遥かに悪い」(前出・咸鏡北道の情報筋)

今まで恵まれた暮らしをしてきた核心階層からは、当然のように出ている。

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「それほど人数がいるわけでもないのに、食糧問題ひとつ解決できないようでは国の威信がもたない」(同)

一方で、「北南対話(南北首脳会談)がうまく行ったのだから、まもなく経済も上向きになり、配給もじきにもとに戻るだろう」と泰然と構えている人もいるという。「武士は食わねど高楊枝」かもしれないが、現状認識が甘いと言えよう。

かつて北朝鮮は、食糧から生活必需品、住宅に至るまでありとあらゆるものを配給対象としてきた世界でもまれに見る高度の配給社会だった。ところが、共産圏が崩壊した後の1990年代前半から配給が減り始め、1995年を境に、一般国民への配給がほとんど途絶えてしまった。

配給以外に生きるすべを知らなかった人々は次々に餓死していったが、商才のある人はモノの売り買いで収入を得て延命した。一方、そんな状況でも核心階層は国から十分な配給が得られていたため、商売する必要がなかったのだ。

つまり、核心階層には20数年遅れで「苦難の行軍」がやって来たのだ。今さら商売をしようにも、すでに商売の経験が長く、海千山千となった庶民相手に「武士の商法」でかなうわけがない。そのため蓄積してきた富を食いつぶし、貧しい暮らしを強いられる人が現れたというわけだ。

核心階層の配給を担ってきた人民委員会(市役所)の担当者は「(核心階層には)商売で儲けて生きている一般人民よりも貧しい人が多くて気の毒だ」「党から良いポストをもらえているというのに、なんであのザマなのか」などと同情と嘲笑が混じったリアクションを示している。

一方、「20年間配給ひとつもらえなくても自分の力で生き残ってきたわれわれ庶民こそが真の実力者」という自負を持っている庶民の言葉はより辛辣だ。

「白頭山の山脈(金日成氏に近い人々)も大したことはない」
「社会主義が終わるかもしれないのにそれを知らずにいるバカ」
「彼らが商売をできないのは、国におんぶにだっこで楽な暮らしをしてきて無能になったからだ」

果たして、核心階層の栄華が復活する日は来るのだろうか。