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北朝鮮は、国内移動の自由がない世界でも珍しい国だが、その中でも特に統制が厳しい区域がある。北西部に位置する慈江道(チャガンド)は。軍需工場が密集している関係で、通行証がなくても多くの地域へ訪問が可能な平壌市民とて、慈江道だけは自由に訪れることはできない。

国際援助団体の職員も立ち入りを厳しく制限され、地元の人が他の地域の人と結婚すれば、慈江道で暮らすことを強いられるほどだ。

当局はそんな慈江道を「先軍革命特別区」に指定する動きを見せている。単に名前を変えるというものではなく、今まで以上に移動を統制して、核兵器や核物質を隠匿する場所にしようとしているのだという。

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、先月末に行われた国家保衛省(秘密警察)の幹部向けの政治講演会で「慈江道を先軍革命特別区に公式に指定する件」についての話があった。

講演の内容は、慈江道は現代戦の軍事的要衝で、戦略的拠点として構築するのは先代(金日成首席、金正日総書記)の遺訓だ、元帥様(金正恩党委員長)が遺訓に従って行う事業なので、綿密に行われなければならないといったものだった。

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慈江道は統制が厳しいだけではない。全体の98%が山岳地帯で秘密裏に軍需工場を稼働させるには最適で、中国と国境を接しているため、有事の際に金正恩氏や最高幹部が脱出できるように秘密の地下通路があると伝えられている。

最高指導者の業績に関する資料が収められた地下アーカイブもこの地域に存在する。

北朝鮮は米朝首脳会談を控え、今月23日から25日までの間に、咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場を、外信記者を招いた上で爆破すると明らかにしているが、対外的には核廃棄プロセスを受け入れる姿勢を見せつつも、核兵器をいかに隠匿するかをめぐり苦心している様子がうかがえると言えよう。

(参考記事:北朝鮮、23~25日に核実験場閉鎖…中露米英韓の取材受け入れ

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情報筋は「核兵器はどこにでも隠せるが、当局は衛星でも把握しづらいところに隠す案を考慮している」としつつ、核兵器と核物質を単に隠蔽するのとどまらず、徹底的に管理するという意図もうかがえると指摘した。

そのための綿密な計画はすでに立てられている。

まず、機密保持のために住民を対象とした思想教育の強化の準備を進めている。また、今まで以上に人口の流動を徹底的に抑制するという方針も示している。

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「慈江道に、首都平壌と似た形の組織体系を確立することに加え、先軍革命特別区にふさわしい住民の精神状態を高いレベルに引き上げるための思想教育も強化すべきと指示した」(情報筋)

さらに、1年以上の労働教化刑(懲役)を受けたものは、道内の中心都市から農村部に追放せよとの指示も下された。同時に毎年年末に、道の保安局(警察本部)が住民が実際に登録したところに居住しているかの確認も行う方針だ。

陸路を通じて移動する人員、車両、物資などを徹底的に管理するために、検問所を新たに設置する計画も立てられた。外国人も訪れる平安北道(ピョンアンブクト)の妙香山(ミョヒャンサン)から、隣接する慈江道の熙川(ヒチョン)の間に、国家保衛省の検問所と設置するというものだ。