北朝鮮の首都・平壌が、地方の保安署(警察署)幹部が密造していた覚せい剤で汚染されていたことがわかった。

中高生まで覚せい剤で「性びん乱」

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し平安南道(ピョンアンナムド)の消息筋が語ったところでは、「最近、道内の殷山(ウンサン)郡にある保安署の40代の監察課指導員が、覚せい剤を製造して密売した疑いで朝鮮労働党から追放され、処罰された。彼は保安署幹部の身分を隠れ蓑に、数年にわたり密売を続けてきたが、国家保衛省(秘密警察)と人民保安省(警察庁)が合同で行う非社会主義行為の取り締まりに引っかかった」という。

この幹部は薬物製造の技術者を雇い、自宅を密造拠点に改造。平壌市郊外にある大規模マーケット、平城(ピョンソン)市場の商人を通じて平壌に覚せい剤を流していた。今年3月、覚せい剤500グラムを商人に卸したことが、当局に察知されたもようだ。

一度に覚せい剤500グラムとは、かなりの量と言えるだろう。それも数年にわたり、継続的に密売されていたとすれば、平壌を汚染した覚せい剤の量がいったいどれくらいになるのか、想像もつかない。

韓国紙・中央日報は昨年4月、北朝鮮当局は平壌の人口約260万人のうち、60万人余りを地方に強制移住させることを計画していると報じた。

同紙によれば、強制移住の対象となるのは◆脱北者や行方不明者の家族◆政治犯収容所の収監者の親戚◆違法薬物および偽造紙幣に関わった犯罪者◆韓流ドラマのDVDの製造・密売など体制の安定を脅かす犯罪に関わった犯罪者――だという。

北朝鮮では、覚せい剤などの違法薬物や、韓流ドラマのDVDを製造・密売する行為は重罪であり、平壌から強制移住させられる以前に、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りになるのが普通だ。

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しかし、そういったケース毎の対応では追い付かないほど、平壌の薬物汚染は深刻なのかもしれない。

正恩氏は、違法薬物の乱用と韓流ドラマの拡散を押しとどめるべく、秘密警察などを動員して様々な努力を重ねてきたが、ほとんど成果は出ていないように見える。

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すでに地方都市では、中高生までが覚せい剤でキメた上での「性びん乱」に走るなど、社会の退廃に歯止めがかからない状況となっている。

こうした問題を放置すれば、退廃の波が平壌にまで及び、収拾がつかない事態ともなりかねない。

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高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記