金正恩委員長は2012年、朝鮮労働党の政治局会議で「10年以内に失われた山林を復旧し、全国の樹林化、原林化、果樹園化を完工させる」という計画を打ち出し、丸太と木材加工品の輸出を全面的に中断させた。だが、この計画がとうてい実現不可能である証拠を、デイリーNKジャパンの現地消息筋たちが伝えてきた。(丹東=カン・ナレ記者)

金正恩氏じきじきの「指示」

北朝鮮は今年初めから、様々な言い訳を作っては山林をひどく損ね、木材加工品の輸出を再開していると、北朝鮮の幹部と現地の消息通たちは口をそろえる。「今すぐ農業に必要な肥料を輸入するためには、木材の輸出以外に別の方法は無い」というのがその理由だ。

木材加工品の輸出のため、最近中国に派遣されたという北朝鮮の貿易部門幹部によると、「手段と方法を選ばず、今年の農作業に使う肥料を必ず輸入してこいという指示を、去る1月10日、金正恩が直接下した」という。さらに、「山林を破壊する木材加工品の輸出は金正恩の承認があるからこそ可能だ」と付け加えた。

他方、前出の消息通は木材輸出の内情について、「輸出用の木材加工品は、様々な種類の丸太を角材にする一次加工品に過ぎない。カラマツの加工品1立方メートルは、中国現地の卸売価格で2,800元(約48,000円)だが、われわれ(北朝鮮)が輸出する時には、一次加工のみなので1,500元(約26,000円)を受け取る」と明かした。

さらに、「通常は30年以上育ったカラマツから角材加工品4立方メートルを作る。これを中国に輸出した場合、6,000元(約52,000円)となる」とし、「中国で複合肥料50キロの値段が110元(約1,900円)だが、我々の国が年間必要とする肥料は60万トン」と述べた。

無理な作業で死亡事故も

また両江道(リャンガンド)の消息通によると、「山林破壊行為を厳罰に処すと言ってきたのに、今年からは突然、丸太を手当たり次第に切り出している」とのことだ。「今ある山林は工業用として価値が無いため全て切り出し、その跡地に工業用の山林を造成するということを口実にして、山林をめちゃくちゃに損ねている」と続けた。

なお、工業用の山林とは「栗や胡桃(くるみ)のような油を取るための樹木、トドマツやギンドロのようなパルプ用の樹木、シラカバやカラマツのような建設材用の樹木のこと」だという。これと共に農業用の樹木として、アカシアやクワのような飼料用の樹木を造成するというのが、「中央の計画」だと消息通は説明した。

だが、この消息通は「中央の山林造成計画というのは、丸太を切り出すための言い訳に過ぎない」と暴露する。その上で「目前の農作業に必要な肥料を買うお金がないので、山林を破壊してでも急を要する肥料問題から解決しようという、場当たり式の対応だ」と当局の山林破壊行為を非難した。

輸送中の事故も多発している。

「運転手たちが金を受け取り、丸太を積んだ自動車の荷台の上に人々を乗せてバス代わりに走ることもある。今年3月5日には、こうして走っていた両江道農村経理委員会の輸出原泉動員科の車両6台が一斉に転覆し、67人が死亡する事故が起きた」とこの消息通は伝えた。