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今年2月初めから3月末にかけて、北朝鮮の協同農場で多くの農民が餓死していたことが明らかになった。先月、中朝国境を訪れた北朝鮮国内に住むデイリーNKジャパンの情報筋が伝えた。(丹東=カン・ナレ記者)

国の支援でようやく延命

北朝鮮の南部・黄海北道(ファンヘプクト)の住民はまず、「金正恩の指示に従い国家保衛省(秘密警察)が協同農場のうち、食糧の無い家庭について特別調査を進めている」とし、「そうした家庭に対しては洞事務所(役場)が毎日1キロのトウモロコシを供給している」と語った。

この住民はさらに、「黄海北道の協同農場では、2月初頭から餓死者が出始めたが、当局は当初、傍観しているだけだった。農繁期が近づくにつれ、死なない程度の食糧を支援しているだけだ」と北朝鮮政府の遅い対応を非難した。

一方、平安北道に住む別の情報筋は同じ時期に、「今年2月はじめから3月末にかけて、黄海北道と咸鏡南道(ハムギョンナムド)、江原道(カンウォンド)の協同農場で多くの農民が餓死した。もし、4月初めの国による食糧支援がなかったら、大規模な餓死者を出す事態に発展していただろう」と述べた。

「軍に供出せよ」

それではなぜ餓死が起きたのか。理由は「国の収奪」にあった。

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情報筋によると、「昨年秋から実施された新しい農業政策に従い、実際に農業を行う農民に対しては、国が1年分の食糧としてトウモロコシを1人360キロずつ、扶養する学生や65歳以上の老人には同じく109キロずつ配給することにした」という。

だが、「こうした1年分の食糧から各種『使用料』として10%を国が取り上げる」とし、さらに「特に昨年は協同農場に登録されている家族1人あたり、豚肉7キロを義務的に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に供出させ、できない場合には1年分の食糧から70キロを減らすという内容を事前に伝えなかった」と、国が食糧を奪っていくカラクリを説明した。

情報筋は続けて、「この結果、扶養家族の場合、手元に残るのはわずか28キロとなってしまう」と指摘。北朝鮮政府による強引な食糧徴発が、餓死者発生の原因であることを強調した。

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北朝鮮では2012年にも、穀倉地帯の黄海南道(ファンへナムド)で数万単位の餓死者が発生した。当局が、金正恩氏の政権就任を祝う「どんちゃん騒ぎ」用の食糧を徴発したことで、極度の食糧不足に陥ったためだ。飢えた人々が家族の亡骸に手を伸ばす「人肉事件」の悲劇すら伝えられた。

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