人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

中国国営通信の新華社は8日、北朝鮮の金正恩党委員長が7~8日に遼寧省大連を訪れ、習近平国家主席と会ったと伝えた。両氏は3月下旬に北京で会談したばかりだ。また、北朝鮮の最高指導者は訪中時に列車を使ってきたが、今回は空路で大連入りした。

わずか1カ月余りで同じ外国首脳と会談するのも、飛行機での訪中も、以前の北朝鮮にはなかった大きな「慣例破り」と言える。

実は、金正恩氏は父・金正日総書記から権力を継承して以降、このよな「慣例破り」をいくつも見せてきた。

わかりやすいところで言えば、夫人の李雪主(リ・ソルチュ)氏を首脳外交の場に同伴させていることがある。金正日氏は自分の妻をまったく表に出さなかったし、祖父・金日成主席の後妻・金聖愛(キム・ソンエ)氏が政治の表舞台に立った期間は、ごく短かった。

(参考記事:【写真特集】李雪主――金正恩氏の美貌の妻

また、北朝鮮のメディア戦略にも変化が見える。金正日時代まで、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)はなかなかその全容をうかがわせない、謎に満ちた存在だった。ところが金正恩時代になって以降、北朝鮮メディアは最新兵器の写真を次々に掲載。弾道ミサイルの発射シーンも惜しげなく公開した。一時は朝鮮労働党機関紙の労働新聞が、まるでミリタリーマガジンのようになってしまったほどだ。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

そしてもうひとつ、金正恩時代になってから、北朝鮮の権力が国民に「謝罪」を行った例を挙げることができる。

2014年5月15日、北朝鮮の首都・平壌で、約500人が犠牲になったとされるマンション崩壊事故が起きた。北朝鮮では「速度戦」の名の下に、無理な工期のごり押しによる手抜き工事が横行。この手の事故が数多く起きている。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

そういった事例の中においても、このマンション崩壊の現場はとくに凄惨なものと言われる。遺体の収容作業すら行われないままガレキの撤去が行われ、ちぎれた手足があちこちに転がっていたとされる。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

それほどの惨事が起きようとも、以前の北朝鮮当局ならば、徹底的に隠ぺいを図っただろう。ところが金正恩氏は、犠牲者の遺族を集めた場で建設工事の責任者である当局幹部に頭を下げさせ、その写真を労働新聞に掲載させたのだ。

(参考記事:ちぎれた手足が散乱、マンション崩壊で500人死亡…そのとき何が!?

この行動の裏には、金正恩氏なりの計算もあったことだろう。だとしても、これは衝撃的とさえ言える出来事だった。

そして2017年1月1日、金正恩氏は自らの肉声で発表した「新年の辞」の中で、自分の「能力不足」を詫びる。次なるは、朝鮮中央通信が配信した公式訳の一節である。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

「新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなります。

いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです」

こうした姿勢に込められた金正恩氏の真意が、どのようなものであるかはわからない。ただひとつ言えるのは、金正恩氏が慣例や前例にとらわれることなく行動できる、自立心の強い指導者であるということだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記