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北朝鮮の金正恩党委員長は、かねてから「輸入病」(何でもかんでも輸入に頼る現象)の根絶を訴えてきた。2016年10月の朝鮮職業総同盟(職盟)の第7回大会で、金正恩氏は参加者に送った書簡で次のように述べている。

「朝鮮労働階級のプライドと胆力で、すべてのものを自分の手で、他人よりさらに立派に作り出すことで、輸入病という言葉そのものをなくし、民族の知恵と祖国の名誉を輝かせなければなりません」

食品の国産化を強調するこうした掛け声に合わせて、北朝鮮の食品工場はインスタントラーメンを生産している。ところが、消費者からは酷評を受けていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、平壌市の万景台(マンギョンデ)区域にある「キョンフン・ウナス食品工場」「妙香(ミョヒャン)貿易総会社食品工場」は牛肉味、鶏肉味、キムチ味など様々な味のインスタントラーメンを製造している。ところが、これが消費者から「労働者ラーメン」と呼ばれて酷評され、売れ行きが悪いという。

「韓国製や中国製に比べると、麺にコシがなくスープの味も悪い」(情報筋)

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平壌近郊にある巨大卸売マーケット、平城(ピョンソン)市場では、インスタントラーメンが北朝鮮製は800北朝鮮ウォン(約10円)、中国製1500北朝鮮ウォン(約20円)、韓国製3000北朝鮮ウォン(約39円)で販売されているが、売れているのは中国製や韓国製ばかりだという。

北朝鮮では、これに限らず国産品の評判は悪い。国営工場が製造し、金正恩氏からの贈り物として子どもたちに配られたお菓子セットは不味いと不評で、市場で二束三文で売り払われる始末だ。

(参考記事:金正恩氏が配る激マズ「ミサイルお菓子」に子供たちから悲鳴

売れ行きの悪さの原因は、品質に加えて食品工場側の販売戦略のミスにもあると言えよう。

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平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)の情報筋によると、平壌の食品工場では国産のインスタントラーメンを広めるために低価格戦略を取っているが、これがうまくいっていないという。

かつての日本や韓国がそうだったように、庶民にとってインスタントラーメンは高値の華で、まだ気軽に買えるものではない。

「庶民は韓国製のラーメンを買うカネがあれば、トウモロコシを1キロ買って家族全員に食べさせるほうがマシだと考える。時々、安い国産ラーメンを買って、豆腐を入れて煮て、酒のツマミやごちそうにするが関の山」(情報筋)

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一方で、生活に余裕がある人々は韓国製や中国製のラーメンを買い求める。味もさることながら、見栄っ張りと言われる北朝鮮の人は少し背伸びしてでも高いものを買おうとするのだろう。言い換えると、安いものを買うと体面にかかわるということだ。

韓国のチャンネルAが2017年2月に放送したバラエティ番組では、韓国で生まれ育った出演者が前述のキョンフン食品工場製のエビラーメンを試食したが、いずれの出演者も美味しいとの反応を示した。演出である可能性もあるが、北朝鮮の消費者が実際の味より「高級品」に魅力を感じていることの証左とも言えよう。

北朝鮮の消費者は一般的に「国産品はイマイチ」というイメージを持っているが、そのイメージを変えることに成功した事例もあり、うまくやれば国産ラーメンが北朝鮮市場を席巻することは夢ではないのかもしれない。

ちなみに、世界ラーメン協会のラーメン消費量の統計によると、北朝鮮と人口規模が似ているネパールでは2017年に14億8000万食、マレーシアでも13億1000万食が消費されている。