最近、北朝鮮当局は国民が所有するラジオの取り締まりを強化している。韓国や米国のラジオを聞かせないための措置だ。南北首脳会談の開催を数日後に控え、和解ムードが漂う中でも、当局は海外からの情報流入に神経を尖らせている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、保安署(警察署)がラジオ受信機を所有している世帯に対する調査を行ったと伝えた。これは「海外の放送を絶対に聞けないよう取り締まれ」という上部の指示に基づくものだ。

北朝鮮では本来、ラジオ受信機を所有するには許可が必要だ。保安署に出向き、登録の手続きをする際に周波数を調整するダイヤルをはんだ付けで固定する。シールで封印して、はんだを剥がせばすぐにわかるようにしてある。

ところが、手のひらサイズの小型ラジオが中国を経て国内市場に流入するようになってから、当局のそのような手法も通用しなくなったのだが、今回改めて取り締まりを強化した模様だ。

当局は2012年に改正した刑法で、第185条(敵対放送聴取)を追加し、反国家目的なしに敵の放送を聞いた場合でも1年以下の労働鍛錬刑、罪状の重い場合は5年以下の労働教化刑に処すと定めた。2015には、最高で10年にまで引き上げられた。また、米国や韓国のラジオに妨害電波を発信しているが、電力難により停まることがしばしばある。

当局の取り締まりにもかかわわらず、韓国や米国のラジオを聞こうとする人は増えていると情報筋は伝えた。

「聞くなと言うから、逆にさらに聞こうとする人もいる。禁止されるほどやりたくなる心理が働くようで、はんだを剥がして韓国や米国のラジオを聞いていて、摘発された人もいる」(情報筋)

中には、痕を残さないようにシールを剥がす器用な人がいて、若者にとっては「朝飯前」だとのことだ。バレても保安員にワイロを渡せばもみ消すことはできるが、ラジオは没収されてしまう。それが保安員のものになることは言うまでもない。

北朝鮮向けのラジオ放送としては、韓国KBSの韓民族放送、NGOが運営する国民統一放送や自由北韓放送、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)など十数局が存在する。

ラジオ放送は北朝鮮の人々に情報を届けるだけではなく、意識を変えるのに非常に重要な役割を果たしているが、実際にどれほど聞かれているかはっきりとしたことはわかっていない。脱北者を対象にした調査で1割に満たないという結果が出たこともあれば、3〜4割に達したという結果もある。

(参考記事:「お説教」には関心なし!? 韓国の対北ラジオが北朝鮮の人々から不評なワケ

一方、北朝鮮の国家安全保衛部(現在の国家保衛省)で勤務していた脱北者のイ・グムニョンさんは、2007年にRFAのインタビューに「韓国は1996年に大きな風船にラジオを入れて北朝鮮に飛ばした、その数は20万台で、うち2万台を回収したが、残りの18万台はどこかに消えてしまった」と答えている。

RFAは、北朝鮮の人々の手に渡ったラジオの数が18万台とすれば、その家族まで含めると韓国や米国のラジオを聞いている人は50万人に達するだろうと見ている。