国際社会の制裁で、深刻な外貨不足に陥っていると伝えられている北朝鮮。金日成主席と金正日総書記の遺体が安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の維持管理の費用を募る財団「金日成・金正日基金」が、なりふり構わぬ外貨稼ぎ事業を繰り広げていることは、デイリーNKジャパンでも既報のとおりだ。

基金は、多額の寄付を行った外国人の会員に、革命の聖地である両江道(リャンガンド)にある三池淵(サムジヨン)での水泳を認め、地元民から顰蹙を買っている。

ある貿易会社は、それに負けじと新たな外貨稼ぎ事業に乗り出した。そのビジネスとは、「脱北者とその家族の再会の斡旋」という驚くべきものだ。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、この貿易会社は海外在住の脱北者を、北朝鮮に残してきた家族に会わせる話をまとめ上げ、報酬として20万ドル(約2144万円)を受け取ったという。

「このようなことは幹部ですらやらないリスキーなものだが、貿易会社は脱北者と家族を中国で再会させた」(情報筋)

通常、脱北者が北朝鮮に残してきた家族と再会はすること自体が、きわめて困難だ。できるとしても、脱北者が個人的に行ったり、支援団体を通じて行ったりする。北朝鮮の機関が再会を斡旋したのは極めて異例のことと言えよう。

金正恩党委員長は、脱北を体制を揺らがす危険要素と見て、国境の取り締まりを強化してきた。昨年に板門店で起きた朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士の脱北を受けて、金正恩氏は「祖国に背を向けて逃れる者を見つけたら、即時射殺せよ」との命令を下しているが、既に脱北した人については金づるとして利用することにしたようだ。

韓国に住む脱北者が、北朝鮮に残してきた家族に送金することについて、金正恩氏が「海外送金作業は度を越さない程度なら協力せよ。ただし、その過程で発生した手数料は国庫に納めよ」との命令を下したことも、「立っている者は親でも使え」という姿勢の現れと言えよう。

これについて情報筋は、北朝鮮の外貨事情がいかにひどい状況にあるかの現れだと指摘した。

北朝鮮当局は、韓国に住む脱北者を家族を使って説得、または脅迫して北朝鮮に連れ帰る工作活動も行ってきた。韓国で活躍していた脱北タレント、イム・ジヒョンさんが北朝鮮に帰国したのも、そのような活動の「成果」と言われている。しかし、金づるである脱北者を連れ帰っても、北朝鮮にとって何の得にもならないだろう。多額の現金を貢がせるのならともかく。

(参考記事:美人タレントを「全身ギプス」で固めて連れ去った金正恩氏の目的