中国の公安当局は先月、30人以上の脱北者を逮捕した。実際にはこれより多くの脱北者が逮捕されているものと思われるが、中国メディアが報じないこともあり、実情はわかっていない。

逮捕された脱北者のほぼ全員が、数週間以内に北朝鮮に強制送還されるが、身柄を引き受ける北朝鮮の保衛部(秘密警察)や保安部(警察本部)は喜ぶどころか、頭を抱えているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

中国から北朝鮮に強制送還された脱北者は、「集結所」と呼ばれる施設に拘禁された上で、保衛部や保安部で拷問を含めた厳しい取り調べを受ける。その後、元の居住地の保安署(警察署)に身柄を引き渡される。

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現地の情報筋によると、一連の過程を経るのに数ヶ月を要し、収監者の食事はすべて保衛部や保安部の負担となる。しかし、経済制裁による外貨不足で施設を運営する予算が不足している。それなのに、中国からは次から次へと脱北者が送り込まれてくるため、保衛部も保安部も悲鳴を上げているのだ。

取り調べが終わった後に、元の居住地の保安署に身柄を送ろうにも、護送用の予算がないとの理由で拒否されてしまう。そのため、両江道保安局には今年に入ってから強制送還された数百人の脱北者で溢れかえっている。これはつまり、すし詰め状態の劣悪な環境に閉じ込められていることを意味する。

中国当局は、国際社会の対北朝鮮制裁が強化されつつあった昨年から脱北者の取り締まりを強化している。中国が取り締まりに力を入れる理由について、情報筋は次のように説明した。

「中国の公安は2011年、わが国(北朝鮮)と司法的協力関係を結んで以降、脱北者の強制送還に熱心になった。(北朝鮮)当局は、逮捕した脱北者1人あたり原木1立方メートルを提供し、強制送還を煽っている」(情報筋)

しかし、原木を提供する経済的な余裕がないことを知った中国の公安当局は「代わりに北朝鮮の鉱山開発権をよこせ」との要求を突きつけているという。

両江道の東隣、咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも事情はさほど変わらないようだ。

現地の情報筋によると、保安局が脱北者で溢れかえっている。脱北者は取調官から、「なんで捕まったんだ。脱北したのなら、さっさと内陸に逃げ込め。次に強制送還されてきたら許さない」と奇妙な脅され方をする。

情報筋が伝える内部資料によると、脱北を試みる人の数は去年より増えているが、その多くが国境の川を渡ってすぐに逮捕され、強制送還されてくるという。