北朝鮮の金正恩党委員長が電撃訪問する前日の中国で、3人の脱北者が逮捕されていたことが明らかになった。その翌日にも4人の脱北者が逮捕された。

韓国の国民日報は、脱北者の救援活動を行っているカレブ宣教会のキム・ソンウン牧師の話を引用し、24日夜に遼寧省の瀋陽駅で10代の女性を含む3人の脱北者が列車に乗り込み、出発しようとしたところで公安当局に逮捕されたと報じた。3人を不審に思った乗客の通報によるものとキム牧師は見ている。

逮捕された脱北者の妹のパク・ソヒョン(仮名)さんは、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に、その時の状況を次のように語った。

「姉さんたちは24日午後10時40分瀋陽発昆明行きの列車に乗り込みました。出発10分前になって問題が発生したんです。最初に逮捕されたのは姉さん一人だけだったけど、慌てて後ろを振り向いてしまったんです。それで警察にバレて15歳を含む女性3人が逮捕されてしまいました。残りの4人は車外に逃げたそうです」

3人が乗ったと思われる吉林省長春発のK2288列車は、瀋陽北駅を経由し55時間をかけて昆明に向かう。公安当局は、瀋陽北駅でのわずかの停車時間を利用して逮捕作戦を行った模様だ。

逮捕された人々は管轄の公安局に身柄を移された後、所在不明となった。パクさんは藁をもつかむ思いで瀋陽の韓国領事館に連絡したが、返ってきたのは「中国側に(情報提供を)依頼した」という答えだけだったという。

カレブ宣教会が国民日報に提供した動画で、この脱北者は「韓国にいる夫が費用を出して、韓国に行くことになった、無事にたどり着きたい」と述べている。ところが、撮影直後に逮捕されてしまい、北朝鮮へ強制送還される危機に瀕している。

翌25日には、雲南省昆明を通過していた列車内でも、30代女性2人とその子ども2人の脱北者4人が逮捕された。

中国では今月、全国人民代表大会と全国政治協商会議が相次いで行われたが、期間中は全国に厳しい警戒態勢が敷かれた。いずれの脱北者も大会の終了後に警戒が緩んだすきを見て雲南省、ラオス、タイを経て韓国に向かおうとしたものと思われるが、金正恩氏訪中に伴い、警戒態勢が継続していたことまでは想定できなかったのだろう。

瀋陽では昨年10月、4歳の男児を含む10人の脱北者が公安当局に逮捕された。先に脱北して韓国に住む父親がテレビに出演して「北朝鮮に強制送還されれば殺される、中国で毒を飲んで自殺するほうが人間らしい最期を迎えられるほどだ。韓国に無事来られるように助けてほしい」と韓国政府に救援を訴えたが、結局は北朝鮮に強制送還されてしまった。

(参考記事:中国が4歳男児ら脱北者を拘束。「毒を飲んだ方がマシ」父親が嘆く理由

実際、昨年7月には、北朝鮮の元党幹部一家が脱北してラオス経由でタイに向かう途中の雲南省で逮捕され、北朝鮮に強制送還される途中で毒を飲み、全員が死亡する悲劇的な事件が起きている。

中朝首脳会談に続き、4月と5月には南北、米朝首脳会談が予定され、朝鮮半島の緊張局面は一気に雪解けに向かいつつある。その裏では、多くの脱北者が人権を侵害された状態で強制送還に怯えながら、息を潜めて暮らしているが、国際社会の関心は高まらないままだ。