北朝鮮製ビールの主要銘柄のひとつとして知られる、大同江(テドンガン)ビール。中国当局は事実上、輸入を禁止しているが、中朝国境に面した遼寧省の丹東では未だに売られている。どうやら中国国内で製造された偽物のようだが、「本物とほとんど変わらない」と評されるその味にはワケがあった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

丹東の対北朝鮮情報筋によると、中国国内で大同江ビールを扱っていた代理店は既に廃業している。北朝鮮からの輸入ができなくなったからのようだ。

ニセの大同江ビールを製造している丹東の清流食品の工場(画像:騰訊地図)
ニセの大同江ビールを製造している丹東の清流食品の工場(画像:騰訊地図)

昨年12月に国連安全保障理事会で採択された制裁決議2397号や、今年1月に中国の商務省と海関(税関)総署が発表した公告2018年第4号には、北朝鮮製の酒類の輸入禁止についての記述はないが、魚のエサの輸入すら禁止している中国の税関当局のことだけあって、ビールの輸入を禁止していても何ら不思議ではない。

ところが、市内のレストランやスーパーでは大同江ビールが売られている。オーナーに「これは輸入禁止品ではないか」と指摘しても、「北朝鮮からの密輸モノだ」などと適当にごまかされるという。

この偽物の「大同江ビール」、ラベルや瓶はもちろんのこと、味も本物とほとんど変わらず、専門家でない限りは見抜けないほど精巧に作られたものだ。情報筋は、その理由は材料にあると見ている。

「明らかに北朝鮮で作られたものではない偽物なのに、大同江ビール特有の味が感じられるのは、同じホップを使っているからと思われる」(情報筋)

製造元は丹東市郊外の安民鎮にある清流食品だと、別の情報筋が明らかにした。中国版ストリートビュー、騰訊地図でこの食品工場を検索すると、社屋の屋上には中国国旗と共に北朝鮮国旗が掲げられている様子が確認できる。つまり、中朝合弁企業ということだ。

「表向きは閉鎖されたように見えるが、工場の内部では一部の施設が密かに稼働している。ここで偽物の大同江ビールが製造されている」(情報筋)

中国商務省は昨年8月、中朝合弁企業の設立や増資を禁止したのに続き、10月には今年1月9日までの閉鎖を命じた。

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この工場はキムチやトゥルチュク(クロマメノキ)酒を中国市場向けに製造していたが、「閉鎖」以降も北朝鮮の技術者と労働者が残り、ニセ大同江ビールを製造しているということだ。

このような行為を個人で行うのは非常に難しい。北朝鮮当局の外貨稼ぎ機関が関与していると考えるのが自然だろう。当局の命令で工場閉鎖を余儀なくされ、苦境に立たされた中国人オーナーと、喉から手が出るほど外貨が欲しい北朝鮮の利害が一致した結果と言えよう。

このビールを納入しているレストランやカラオケ店は、当局の取り締まりを避けるためか馴染みの客だけに中国製の一般的なビールの4倍以上の20元から25元(約330円〜420円)で販売している。

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