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北朝鮮の金正恩党委員長は5日、韓国の文在寅大統領が派遣した特使団と面談し、南北首脳会談開催などについて合意に達した。韓国政府の発表では、金正恩党委員長は朝鮮半島の非核化の意思を持っており、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され体制の安全が保証されるなら核を保有する理由がないと言及したと明らかにされた。8日には、米朝首脳会談の開催も発表された。

ところがこの件に関して、朝鮮中央通信、労働新聞などの北朝鮮メディアは、いまだに沈黙を守っている。これについて韓国統一省の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は12日の定例会見で「立場を整理するのに時間が必要であるなど、慎重なアプローチをしているものと考える」との見方を示した。

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現段階で、北朝鮮国内でこのことを知っているのは、高級幹部、韓国や米国のラジオを密かに聞いている人、海外に行ける立場の人などに限られるが、実際にニュースに接した人の間からは、金正恩氏が示した非核化の意思について疑問の声が上がっている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋に「金正恩氏が韓国の特使団に朝鮮半島を非核化する意思を示したが、どう思うか」と質問したところ、次のような答えが返ってきた。

「一言で言うと『カネをくれ』ということだ。それ以上でもそれ以下でもない」(情報筋)

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今まで北朝鮮当局は、米国を祖国統一の最大の障害物である、米国に対抗するためには軍事強国にならなければならない、祖国統一の偉業を達成するために核は欠かせないと主張してきた。情報筋は「核を放棄すると言い出したところを見ると相当追い詰められていることは想像がつく」と語る一方で、金正恩氏の非核化の意思について次のように述べた。

「金正日総書記は、国民を餓死させても核を手放そうとしなかった。それを(金正恩氏が)簡単に手放すわけがない」(情報筋)

非核化を持ち出したのは、制裁がもたらした危機の打開策に過ぎず、金日成時代にも金正日時代にも、表向きは非核化を掲げつつも、裏では核開発を進めていたことを考えると、今さら核を放棄するなんて言っても信じる人は誰一人いないと情報筋は見ている。

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋も同様の見方を示している。韓国や国際社会が北朝鮮の非核化を叫んだところで全くの無駄だ、いくら人民経済が悪化して危機に瀕しても北朝鮮が非核化を受け入れることはないだろうというものだ。

さらに、制裁により国内経済が急激に悪化していると述べている。その理由は中国とロシアが制裁をさらに強化したからだと指摘する。

「人々の間では『第2の苦難の行軍』や『大苦難の行軍』が始まったのではないかという恐怖が広がっている」(情報筋)

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北部国境地帯では、制裁による物資不足と売り惜しみで市場から物が消えたと伝えられている。数十万人とも数百万人とも言われる餓死者を出した1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を経験した北朝鮮の人々にとって、これほど恐ろしいことはないだろう。

(参考記事:「市場から商品が消えた…」北朝鮮の対話攻勢、やはり制裁が影響か

情報筋は口を合わせて、お上が核を開発しても放棄を宣言しても、日々の暮らしに追われている一般住民は気にしないだろう、ひたすら中国とロシアの制裁が少しでも緩和されることだけを望んでいると述べた。

上述の通り、現段階で南北・米朝首脳会談と非核化について北朝鮮国内で知っているのはごく一部の人に限られている。しかし、当局が隠蔽しようと躍起になっていた金正恩氏の兄、金正男氏殺害事件のニュースは、口コミで全国に広まったことを考えると、今回の件も遅かれ早かれ多くの国民が知ることになるだろう。そうなればまた違った形の見方が出てくる可能性もある。

(参考記事:金正男氏の「殺害情報」を広める「情報通の奥様」たち