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ペンス米大統領は14日、米ニュースサイト・エクシオスとのインタビューで、北朝鮮の金正恩党委員長は、自分の叔父を1万人が見守る中、大口径火器によって処刑したと語った。

人体をミンチに

米トランプ政権は最近、北朝鮮に対する圧力強化の一環として、金正恩体制の国民に対する人権侵害への非難を強めている。

訪韓したペンス氏は9日、平昌冬季五輪の開会式出席に先立ち脱北者らと面会。ここには北朝鮮に抑留され、昏睡状態で解放された直後に死亡した米国人大学生・オットー・ワームビアさんの父親も同席した。また、トランプ大統領は2日、ホワイトハウスに脱北者6人を招き、北朝鮮における人権侵害の状況を聞き取った。

冒頭のペンス氏のインタビューも、この文脈の中で行われたものだ。また、訪韓して文在寅大統領と面会した金正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が韓国世論に好印象を与えたと見られているだけに、インタビューに答えたペンス氏の言葉にも力が入ったようだ。

ペンス氏はここで、「金ファミリーが何をしてきたか、忘れてはならない」と指摘しつつ、金正恩氏の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏の殺害事件について次のように言及。金正恩氏は「最も最近では、化学兵器を使って異母兄の殺害を命令」し、全世界に公開された空港の監視カメラ映像を通じて「この残酷な映像を見た」と強調した。

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これは、確かにその通りである。しかし、次の言葉には少し問題がある。

「北朝鮮の政権と彼(金正恩氏)の家族は、叔父を大口径火器で撃ち、1万人の前で処刑するよう命令した」

(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…

ここで言われている叔父とは、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長のことで、彼が2013年に処刑されたのは事実だ。だが、どのような状況で処刑されたかは確かな情報がなく、高級幹部ら数百人の前で銃殺されたとの話が漠然と伝わるのみだ。それもディテールに欠けた伝聞に過ぎず、そのせいで「張成沢は生きている」との噂が一部で根強く囁かれている。

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たしかに、金王朝は残忍な方法で公開処刑を行ってきた。特に金正恩氏は、大口径火器で人体をミンチにするのが好みのようだ。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

しかし、そんな様子を1万人に見せたのであれば、必ず具体的な話が海外にも漏れ伝わってくる。ハッキリ言って、ペンス氏の言葉は何かの勘違いか、あるいは誇張である可能性が高い。

実際、「1万人」の根拠を質したボイス・オブ・アメリカに対し、ホワイトハウスはこれまでのところ、何ら回答を寄せていないという。

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北朝鮮における人権侵害が深刻なのは事実であり、いくら非難しても足りないほどだ。そういった意味で、トランプ政権がこの問題に言及することは望ましいことだ。

しかし、深刻な問題であるだけに、「テキトー」にやってはいけない。そんなことでは、北朝鮮に揚げ足を取られるだけだ。そしてより重要なのは、トランプ政権が口だけでなく、本気で北朝鮮の人権問題に取り組むことだと言える。

(参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記