この時、韓国と北朝鮮はすんでの所で踏みとどまり、話し合いにより危機を回避した。しかし事態の進行がより早ければ、対話が間に合わなかった可能性もあった。
つまり、誰も戦争を計画していないのに、偶発的な出来事が戦争の引き金を引いてしまう可能性は常にあるということだ。
昨年11月に起きた北朝鮮兵士の亡命事件では、追撃兵らが軍事境界線の南側に向けて数十発の銃撃を行った。これが、北朝鮮と米韓との交戦に発展したらと思うとゾッとするが、最近の韓国メディアの報道では、件の兵士は酒に酔って交通事故を起こし、その「勢い」で亡命を決行したという。
事実なら、ひとりの「酔っ払い」がアジアを揺るがす危機を作り出すかもしれないということなのだ。
(参考記事:必死の医療陣、巨大な寄生虫…亡命兵士「手術動画」が北朝鮮国民に与える衝撃)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。