かつての北朝鮮は、世界でも類を見ない配給国家だった。大多数の北朝鮮国民は、国から配給される食糧や生活必需品に頼り、決して豊かではないが安定した暮らしを営んでいた。
それが変わり始めたのが、共産圏の崩壊が相次いだ1980年代のことだ。1987年ごろから食糧の配給量が減り始め、1990年代に入って遅配が増加した。そして、1995年ごろからは配給が完全に途絶えてしまったのだ。
そのとき、「食糧問題はいつか国が解決してくれる」という考えを変えられなかった人々は、次から次へと餓死した。その数は数十万人単位になると言われている。これが、1990年代後半の食糧難「苦難の行軍」だ。
(参考記事:「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶)