北朝鮮で創作される文化芸術作品は、基本的に最高指導者を称え、社会主義体制を誇示する目的が込められている。つまりはプロパガンダである。一般庶民の日常や恋愛などをテーマにした良質な作品もあるにはあるが、圧倒的に少ない。
とりわけ重視されているのが、金正恩党委員長の祖父・金日成主席を始祖とする「金王朝」を賛美することだ。裏返すと、最高指導者の尊厳を傷つけるような失態を冒せば、芸術家としての生命だけでなく肉体的生命まで容赦なく奪われる。
(参考記事:遺体が粉々になり原型とどめず…金正恩氏の「劇団員虐殺」事件)金正恩氏の父・金正日総書記は、自らのスキャンダルを隠すため、自分の愛人だった女優の禹仁姫(ウ・イニ)氏を公開処刑し、この世から葬り去った。そのあまりのむごたらしさに、気を失う人もいたという。
(参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇)北朝鮮で天才ヴァイオリニストとしての名声をほしいままにしたムン・ギョンジン氏も、そのような悲劇をたどった芸術家のひとりだ。