韓国で2月9日から開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪に、北朝鮮の芸術団が派遣される。詳細はまだ明らかではないが、一部の韓国メディアからは、金正恩党委員長がこよなく愛するガールズグループ「モランボン楽団」が派遣されるのではという観測が出ている。

夜の奉仕「木蘭組」

韓国と北朝鮮は9日に南北高位級会談を行った。会談では、北朝鮮が平昌五輪へ選手団だけでなく、応援団、芸術団を派遣することで合意。芸術団となっていることから、「本命はやはりモランボン楽団か」と考えられているのだ。

過去にも、モランボン楽団は確執深まる中朝関係を改善するための切り札として、北京に派遣されたことがある。ただし、この時は公演に仕込まれた巧妙なワナに、中国側がいちはやく気づいたことから、公演はキャンセルされた。

ここで、「たかが芸術団」と思ってはならない。モランボン楽団は金正恩氏の肝いりで結成されたガールズグループだ。それだけに、派遣されるとなればその意味は大きい。

北朝鮮で歌って踊る女性といえば「喜び組」を連想する向きもあるだろう。しかし喜び組とは最高指導者の身辺補佐をする女性たちの総称である。なかには、夜の特別な奉仕をするグループも存在するとまことしやかに伝えられているが、モランボン楽団は、彼女たちとは一線を画す存在だ。とは言え、喜び組もモランボン楽団も護衛総局の管轄下にあると見られ、組織的には同系列とも言える。

(参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖

昨年10月の朝鮮労働党総会では、楽団長、いわば総監督で金正恩氏の「元カノ」との噂があった玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏が前代未聞のスピード出世を遂げた。これだけでも、モランボン楽団が金正恩氏の特別な寵愛を受けていることがわかる。

(関連記事:金正恩氏が「親密美女」を猛スピードで出世させている

モランボン楽団は、まさに金正恩氏の楽団と言えるだけに、派遣されればその意味は大きい。

金正恩氏は、今年の施策方針演説である「新年の辞」で言及するほど、平昌五輪の参加へ並々ならぬ意欲を見せた。平昌五輪への参加をテコに、韓国へ対話を呼びかけた狙いとしては、米韓関係にくさびを打つことや、北朝鮮が現在置かれている孤立状況を打開する意図があると見られる。

これに加えてモランボン楽団の派遣となれば、国際社会が北朝鮮に抱くネガティブなイメージを払拭させる突破口の一つとして考えているかもしれない。

こうした政治的意図が込められていたとしても、もしモランボン楽団の派遣が実現すれば、既に特訓が始まっていると伝えられている美女応援団の質の高いパフォーマンス同様、北朝鮮歌謡、いわゆるNK-POPの象徴的存在であるモランボン楽団の初の海外公演を楽しむのは悪いことではない。

(参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

高英起(コウ・ヨンギ)

>>連載「高英起の無慈悲な編集長日誌」一覧

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記