韓国統一省は11日、北朝鮮の権力組織図の最新資料を配布した。それによると、北朝鮮における最強の権力機関とされる朝鮮労働党組織指導部の部長に崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長が就いている。ただ、崔氏の名前の横には(推定)と付記されており、確認は取れていないもようだ。

組織指導部長は北朝鮮の政務と人事を一手に握る要職で、金正日総書記は1973年から2011年に死去するまで自身が兼務していた。金正日氏の死後は妹の金慶喜(キム・ギョンヒ)氏、次女の金雪松(キム・ソルソン)氏がそれぞれ務めたとの情報がある一方で、韓国情報機関・国家情報院などは「空席だった」と分析している。

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崔氏は昨年10月の朝鮮労働党中央委員会第7期第2回総会で「党中央委員会部長」に任命されたが、受け持ちの部署は明かされていない。国家情報院傘下のシンクタンク・国家安保戦略研究院は「崔氏の地位を考えると、組織指導部長以外にふさわしい役職は見当たらない」との見方を示している。

筆者は当初、この分析に半信半疑だった。崔氏は父親が故金日成主席のパルチザン時代からの同志という名門の出ながら、自身の性欲を満たすため若く美貌の女性の歯をぜんぶ抜いてしまうなど極悪三昧を働き、きわめて評判の悪い人物だからだ。

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また、組織指導部長の強大な権力は、扱うのが非常に難しいものでもある。よく「北朝鮮のナンバー2」であるとするニュースを目にするが、厳密に言って、北朝鮮にナンバー2などというものはいない。権力者は、独裁者ただひとりだ。独裁者の「次」をうかがうような実力者が登場すれば、容赦なく粛清されてしまう。金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長がまさにそうだった。

ただ、最近のもろもろの状況を見るに、はやり崔氏が組織指導部長に就いた可能性は高いようにも思える。とすれば近い将来、崔氏が権力の使い方を誤って粛清の憂き目に遭うこともありえないことではなかろう。

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一方、統一省の資料によると、秘密警察トップである国家保衛相は、金元弘(キム・ウォノン)氏からチョン・ギョンテク氏に交代した。金委員長の統治資金を管理する党39号室のトップは、全日春(チョン・イルチュン)氏からシン・リョンマン氏に代わった。

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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