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北朝鮮北東部の羅先(ラソン)特別市。北朝鮮政府は1991年、この地を「経済貿易地帯」に指定し、経済特区として開発を進めてきた。多くの中国企業が進出し、平壌に次ぐ豊かな町として繁栄してきた。

ところが、核・ミサイル開発に対する国際社会の制裁強化で企業の撤退が相次ぎ、以前は経済的に余裕のあった市民も、今や日々の糧にも事欠く状況に転落してしまった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、全国的には、国際社会の制裁強化による一時的な苦境から抜け出し、一息ついた状態だが、羅先の状況は深刻だ。

中国企業で働いていた労働者や関連する貿易会社の社員が、中国資本の撤退で仕事を失ってしまったからだ。

羅先の工場は、中国企業を経由して世界各国のアパレル企業から受注し、様々な衣類を生産していた。また、漁業、水産加工業も盛んだった。

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ところが昨年8月、中国は国連安全保障理事会で採択された制裁決議2371号に基づき、北朝鮮との合弁企業の設立と増資を禁止した。この措置を機に中国企業の間で撤退ラッシュが始まった。

(関連記事:中国、北朝鮮との合弁企業設立や増資を禁止

さらに、国連安全保障理事会は昨年9月、制裁決議2375号を全会一致で採択し、北朝鮮からの繊維製品の輸入を全面的に禁止した。羅先の主力商品がすべて奪われてしまったのだ。

仕事を失い、収入が途絶えた羅先市民は、寒い冬を暖房なしに過ごしているという。暖房の燃料となる石炭は、制裁で輸出ができなくなったおかげで安値で国内市場に出回るようになったが、市民はそれすらも買えないほど困窮している。

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ちなみに羅先は、海流の影響で緯度の割には比較的温暖で、冬季にも最高気温が0度以上になることもあるが、寒いことには変わりない。

市民が仕事を失ったことで、地域の保安員(警察官)と保衛員(秘密警察)たちも頭を抱えている。薄給に喘ぐ彼らは、市民や羅先を訪れる中国人からワイロをせびり取ることで生計を立ててきた。しかし、もはや市民はワイロを払えるほどのカネを持っていない。そこで、ターゲットを運送業者や中国の貿易業者に絞っているようだ。

中国の対北朝鮮情報筋によると、保衛員は中国の貿易業者に、ワイロとして自分の車やバイクのガソリンタンクを満タンにすることを要求している。また、交通保安員は食糧や生活必需品をワイロとして要求している。情報筋は、トラック1台分の食糧などを渡したにもかかわらず、違反切符を来られ、2000元(約3万5000円)もの罰金を要求されたという。

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ワイロの要求は北朝鮮のどこでも行われていることだが、やりすぎると悪い評判が立つ。そうなれば羅先に来る中国業者が減り、彼らが地元にもたらす生活必需品も途絶えてしまう。それで困るのは、保安員や保衛員も同じだ。

去年の今頃、北朝鮮の貿易会社はパンフレットまで制作し、羅先市内で建設中のマンションへの国内外の投資を誘致していた。それがわずか1年足らずでここまで状況が悪化してしまった。国際協調が眼中にない北朝鮮においては、特区経済の豊かさは砂上の楼閣だったようだ。