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北朝鮮の両江道(リャンガンド)でトラクターが絶壁から転落し、2人が死亡する悲劇的な事故が起きた。その事故が、どういうわけか政治的事件になるかもしれないと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

事故が起きたのは昨年12月中旬のことだ。夜間に峠道を走っていたトラクターが、絶壁から転落した。この事故で運転手と補助運転手の2人が死亡した。

事故を受けて、協同農場の幹部は責任問題が浮上するかもしれないと戦々恐々としている。貴重な人命が失われたからではない。このトラクターは金正恩党委員長から「贈り物」として下賜されたもので、それが事故で大破してしまったからだ。

朝鮮中央通信は、先月7日に平壌の金日成広場で「チョンリマ(千里馬)−804」号トラクターと「忠誠−122」号トラクター、「勝利」号トラック300台の進出式が行われたと報じたが、今回事故を起こしたのは、この時のもののようだ。

これに先立つ昨年11月、金正恩氏は千里馬−804を生産している金星(クムソン)トラクター工場を現地指導している。

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死亡した運転手2人の葬儀は、郡の協同農場経営委員会と朝鮮労働党委員会が責任を持って行っている。それほどの扱いになるのは、2人が1号贈り物(金正恩氏からの贈り物)を運んでいた途中で死亡したためだ。

北朝鮮は、国民の命よりも指導者の肖像画を大切にするような社会だ。肖像画を守るために命を落とした人は、その「対価」として手厚く葬られるが、今回も同じケースだろう。

(参考記事:北朝鮮「指導者の肖像画」を守って死んだ人々にあり得ない仕打ち

幹部たちは、トラクターに加え、道路の補修をきちんと行っていなかったことの責任も負わされるかもしれないと震えている。

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北朝鮮の道路状態は劣悪なことで知られる。平壌と各地を結ぶ高速道路ですら、あちこちに穴が空いているほどで、両江道など北部山間地域の道路状態は推して知るべしだ。

特に、山道は状態が悪い上に曲がりくねっているため、坂道や急カーブでの事故が絶えないのだ。照明もまったくなく、あったとしても電力難で使えないので、夜間の事故も多い。

トラクター転落事故の数日前にも、商人を荷台に乗せたトラックが雪道で横転し、16人が死亡する事故が起きている。

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元はと言えば、国がきちんと道路補修の予算を配分しないことに原因があるのだが、責任は末端の幹部に押し付けられるのが北朝鮮の常だ。