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人口2500万人の北朝鮮で使われている固定電話は、2008年の時点でわずか118万回線。人口が5倍の日本(4758万回線)に比べると、普及率はかなり低い。だが、北朝鮮で使われている携帯電話の台数は、固定電話よりはるかに多い。

米国の国際マーケティンググループ「We are social」とカナダのIT企業「Hootsuite」によると、2017年3月時点の北朝鮮の携帯電話加入者数は370万人。また、韓国の国家情報院は今年8月、北朝鮮で使われている携帯電話の数を470万台と明らかにしている。平壌での普及率は7割、地方では1割と、地方により差が大きいが、普及が進んでいることは間違いない。

北朝鮮の携帯電話会社は、若いユーザー層のニーズに応じて、様々なスマートフォンを販売している。今ではチンダルレ、アリラン、平壌など様々なブランドのスマホがあるが、中でも人気があるのはエギタッチと金アリランというものだ。

朝鮮語で「子どもスマホ」という意味のエギタッチだが、子ども向けというわけではなく、小さくてデザインがかわいい上に、基本的な機能が揃っているのが売りの機種だ。もうひとつの金アリランというのは、金色のスマホだそうだ。

ただ、料金は決して安くない。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)を例に挙げると、端末は一番安いものでも中国人民元で500元(約8600円)する。ハイエンドユーザー向けは4000元(約6万9000円)もするという。SIMカードは、最初から携帯に挿入されていることもあるが、別々に買うのが基本で、通信の容量により10元(約170円)から75元(約1300円)まである。

つまり北朝鮮での携帯電話の初期費用は、65万北朝鮮ウォン(約8450円)から550万北朝鮮ウォン(約7万1500円)となる。これをコメ価格に換算すると115キロから1トン、労働者の一般的な年収に換算すると、11年から91年分が必要になる。

そして、北朝鮮においては携帯電話などのITデバイスは、人びとを監視する装置として使われている。

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北朝鮮で発売されているウルリムというタブレットPCを分解・分析したドイツのITスペシャリスト、フロリアン・グルノウ氏は、米ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、タブレットPCには監視ソフトウェアが組み込まれており、イントラネット(国内限定のネットワーク)の閲覧履歴をスクリーンショット付きで記録している、と明かしている。

また、監視ソフトウェアは問題のあるファイルを遠隔操作で削除したり、ファイルのシェアを遮断したりもする。グルノウ氏は「これは、何もするなという政府からの心理的なメッセージだ」と述べている。

最近脱北したある女性は、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、北朝鮮でスマホを買った際にコンピュータ関連の仕事をする知人から「政府が通信内容をモニタリングしているかもしれない、実際そうしているだろう」という話を聞いたと明かしている。それからは自分のスマホと少し距離を置くようになり、政府批判などの微妙な話をする際には、スマホを別の部屋に置いていたと語った。つまり、盗聴を恐れていたということだ。

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ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に応じた別の脱北者男性は、北朝鮮政府が認めていない違法コンテンツを見たのばバレると、刑法60条の国家転覆陰謀罪に問われ、死刑にされると語った。実際に、同条は反国家目的で政変、暴動、デモ、襲撃に参加したり陰謀に加担したりした者は最高で死刑と財産没収刑に処すと定めている。

実際は必ずしも死刑にされるわけではないが、一昨年4月には韓流ビデオのファイルを保有していたとの容疑で、北朝鮮の秘密警察が女子大生に凄惨な拷問を加えたとの情報が伝えられている。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…