2017年の北朝鮮を振り返る(4)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国連安全保障理事会は22日午後、北朝鮮が11月に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受け、同国に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。
今回の決議では、北朝鮮へのガソリンやディーゼル燃料、灯油などの石油精製品輸出を昨年の10分の1に削減することが決まった。また、北朝鮮の輸出の1割を占めるとされる農産物や食品、機械類などが禁輸対象となった。過去の制裁で、すでに北朝鮮の輸出の9割を占める品目が禁輸となっており、すべて履行されれば、北朝鮮はほぼ全面的に輸出の道を断たれる。
度重なる制裁決議に耐えてきた北朝鮮だが、さすがにここまで来ると、来年は何が起きるかわからない。
一方、経済制裁は金正恩党委員長の個人的な「楽しみ」を直撃している可能性がある。
「夜の奉仕」も
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、欧州連合(EU)は11月までに、キャビア、ワイン、ビール、コニャックなどのアルコール類、ハンドバッグをはじめとする皮革製品、コートを含む衣類、アクセサリー、靴など22種類以上の物品を北朝鮮への輸出禁止品目に指定した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は、金正恩氏を頂点とする権力層のために、主にヨーロッパから贅沢品を輸入してきた。それだけでなく、金正恩氏は「喜び組」のために、多額の金を費やして「セクシーアンダーウェア」を輸入していると英国の大衆紙であるデイリー・メールが報じたこともある。
(関連記事:金正恩氏が大金をつぎ込む「喜び組」の過激アンダーウェア)金正日時代にその存在が暴露された喜び組は、北朝鮮では「5課処女」とも呼ばれている。朝鮮労働党組織指導部傘下の護衛総局、通称「5課」が組織・管理していると見られているからだ。
(注)韓国語(朝鮮語)で「処女」とは、未婚女性や若い女性の総称
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面彼女たちに与えられた任務は指導層の身近で仕えることだ。様々な専門分野に分かれており、最高指導者である金正恩氏や、その他の幹部らのありとあらゆる世話をする。なかには、特別な夜の奉仕を専門とする「木蘭組」という集団も存在するという証言もある。
(参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖)金正恩氏をはじめ指導層の「密かな楽しみ」のためでもあり、そして外部には絶対に知られてはいけない任務を持つ謎のセクションだけに、多額の金を投じているのだろう。
EUの措置は今にはじまったわけではないが、中長期的に金正恩氏の個人的な楽しみさえ奪う可能性がある。
「走り屋」金正恩氏
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面RFAによると、EUは家電やデジタルカメラなどにも上限を設けたうえに、バス、飛行機、オートバイなどの輸送手段の価格上限を1万ユーロ(約132万円)と定めた。
車好きと知られる金正恩氏は心中穏やかではないだろう。金正恩氏は、日頃のストレスを発散させるためか、夜中にこっそり専用ベンツに乗って平壌市内をドライブしているという噂があるからだ。
(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路)こうした贅沢品の禁輸は、北朝鮮の一般庶民の生活にダメージを与えるわけではないが、懸念される部分もある。
現在の北朝鮮の食糧事情は、かつてに比べ大幅に改善されている。ただ、国民経済のなし崩し的な資本主義化が進行し、貧富の格差が広がっている今、貧困層は食べ物などの価格がわずかに上昇しただけでも大きな影響を受ける。
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち)実際、一部地域では餓死者が発生したとの情報も流れている。制裁の強化が罪のない人々に犠牲を強いることのないよう、国際社会は慎重にモニタリングすべきだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。