延吉市内の市場で売られている北朝鮮産の海産物(画像:対北朝鮮情報筋12月25日撮影)
延吉市内の市場で売られている北朝鮮産の海産物(画像:対北朝鮮情報筋12月25日撮影)

今年8月に国連安全保障理事会が採択した対北朝鮮制裁決議2371号は、北朝鮮産の海産物の輸出を全面的に禁止している。中国当局の厳しい取り締まりで、一時は現地の市場から姿を消したが、今では以前と同じように売られるようになっている。

(関連記事:中国の市場で北朝鮮産の海産物激減…禁輸措置の影響か

中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋によると、吉林省延辺朝鮮族自治州延吉の複数の市場ではホタテ、アサリ、サザエなど様々な北朝鮮産海産物が売られていて、生きたままで持ち込まれたカニも取引されている。

別の情報筋によると、これらの海産物は税関を通さずに密輸で持ち込まれたものだ。ズワイガニは500グラム40元から80元(約700円〜1400円)で売られており、以前と比べて30元(約500円)ほど安くなっている。

これは、正規の販路を完全に絶たれた北朝鮮の業者が、中国の業者に買い叩かれいるためと思われる。また、北朝鮮の各貿易会社は、中央に納める忠誠の資金、つまり上納金を確保するためにも海産物を投げ売りしているとも考えられる。

喜んでいるのは、新鮮な北朝鮮産海産物を安く手に入れられるようになった延吉の市民だ。かつては、北朝鮮産の海産物を見かけたら当局に通報する人もいたが、今では通報するより喜んで買い求める人の方が多いという。

この地域で北朝鮮産海産物の需要が高いのは、地理的な条件によるものだ。

北朝鮮と国境を接する吉林省は、その東端が日本海まではわずか15キロのところまで伸びているものの、海岸との間にはロシア領が横たわっている。そのため、新鮮な海産物はロシアや北朝鮮から輸入しなければならないのだが、ロシアの極東地域は深刻な労働力不足のため漁獲が低調で、北朝鮮から輸入するのが一般的となっている。

ちなみに、吉林省から最も近い中国の海港は遼寧省の丹東だが、延吉からは700キロも離れている。北朝鮮の羅津(ラジン)までは100キロ足らずだ。

一方、その丹東でも北朝鮮産の海産物の密輸が横行していると韓国のKBSが報じている。

KBSは現地の業者の話として、密輸は丹東から北東に約100キロ、鴨緑江を挟んで中国と向かい合う平安北道(ピョンアンブクト)の碧潼(ピョクトン)郡東主里(トンジュリ)で行われていると伝えた。

水豊ダムからさらに遡ったところにあるこの地域には、ダム湖によってできた入り江がいくつもあるが、民家は少ないため、取り締まりから逃れるには最適のようだ。

また韓国のMBCは、中国の漁師が漁船1隻あたり1ヶ月に800万ウォン(約84万3000円)の入漁料を北朝鮮当局に払い、北朝鮮の領海で漁を行う「幫挺」と呼ばれる行為が横行していると報じた。

ただ、中朝の密輸業者や漁師がいくら頑張っても、制裁発効前のように大量の海産物を取引するのは難しいと見られる。

(参考記事:スケソウダラの大規模密輸を企む中国、北朝鮮の業者