北朝鮮で人気を集めているグルメカレンダー(画像:デイリーNK)
北朝鮮で人気を集めているグルメカレンダー(画像:デイリーNK)
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北朝鮮の市場に、2018年版のカレンダーがお目見えした。北朝鮮でカレンダーは、持ち主の地位を表す重要なものであるため、人々は気合を入れて選ぶようだ。そのトレンドからは、北朝鮮で起きている変化が読み取れる。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、これまでの多くの北朝鮮のカレンダーは、国や最高指導者の政策が色濃く反映され、プロパガンダ臭のするものだったという。

例えば、国営企業が制作した2017年度版のカレンダーには、国営の高麗航空の客室乗務員(CA)の女性らが登場した。観光に力を入れる金正恩党委員長の意図が反映されたものと思われる。

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最近でも、平壌市内のタワーマンション団地である黎明(リョミョン)通り、孤児院、革命の聖地といった金正恩氏の業績をアピールするような写真入りのカレンダーが発売されている。だが、その売れ行きは金正恩氏の人気に比例して下落傾向にあるようだ。売れ行きが落ちると同時に価格も安くなっているとのことだ。

メディア戦略に力を入れている金正恩氏としては、不本意なことだろう。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

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このようなカレンダーは主に、平壌にある外国文出版社、朝鮮郵票社などの国営企業が、紙などの材料を海外から輸入して制作している。製品はトンジュ(金主、新興富裕層)が独占的に買い付け、平壌市内の市場に卸す。そこから全国の市場へと広がっていく。

各企業は消費者のニーズ、市場のトレンドに敏感にならざるを得ない。貴重な外貨を使って制作したのに、売れない商品ばかりを作っていたら、厳しい競争に負けてしまうからだ。そのため、プロパガンダ的なカレンダーよりも、自然と人気の高いものに力を入れるようになる。

日本でカレンダーと言えば、金融機関や保険会社、馴染みの店からタダでもらうものという認識があるが、北朝鮮においては1990年後半まで、カレンダーは幹部にしか配給されないものだった。つまりは富や権力の象徴なのだ。そのため、人々は少しでも良いものを買おうとする。

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洞事務所(末端の行政機関)はポスター型カレンダーを100北朝鮮ウォン(約1.3円)というお値打ち価格で配給しているが、「タダでも要らない」と言われてしまう。「そんなものを家に貼れば、貧乏人扱いされてしまうから」(情報筋)だそうだ。

北朝鮮で売られているカレンダーには様々な種類があるが、トンジュや幹部の間で人気があるのは、70ドル(約8000円)もするデジタルカレンダーだ。ちなみに2017年版カレンダーは映画俳優の写真入りのものが人気だったが、2018年版は料理や陶磁器、風景の写真が入ったものが人気だという。

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北朝鮮のカレンダーにも様々な祝日が赤字で表記されている。デイリーNKが入手した外国文出版社の2018年版カレンダーには、1月8日の金正恩氏の誕生日は祝日として表記されていない。

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平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、現地では制裁で石炭の輸出ができなくなり、多くの労働者が仕事を失い苦しい生活を強いられている。人々は、それが金正恩氏が進める核・ミサイル開発のせいであることを知っており、世論が非常によろしくないという。

(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音

このような状況で誕生日を祝日にするのはリスクが高い、との判断が、当局で働いたのかもしれない。

一方、韓国の聯合ニュースが入手した、朝鮮出版物輸出入社のカレンダーの表紙には「敬愛する最高指導者金正恩同志」と記載され、昨年までなかった「最高指導者」という肩書が追加されている。聯合はそれをもって、金正恩氏の権力と権威がより強固になった表れであると解説している。

【参考】2018年の北朝鮮の法定公休日

1月1日:元日

2月16日:光明星節(金正日総書記生誕記念日)と旧正月

3月2日:旧暦の正月15日

3月8日:国際婦女節(国際女性デー)

4月5日:清明節

4月15日:太陽節(金日成主席生誕記念日)

4月25日:人民軍創立日

5月1日:国際労働節(メーデー)

6月6日:少年団創立日

7月27日:祖国解放戦争勝利記念日(戦勝節、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた日)

8月15日:祖国解放記念日(光復節、日本の植民地支配から解放された日)

8月25日:先軍節

9月9日:人民政権創立日(朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日)

9月24日:秋夕(旧盆)

10月10日:党創立記念日

12月27日:社会主義憲法節