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彼が出て行くとすぐにニコラスが狂ったように笑い始めた。「来てくれてほんとうに有難う!あなたが現れてから態度が一変したでしょ。あなたが来る前の雰囲気が分かりますか? 本当にぞっとしますよ!私はその間ずっと撮ったビデオを見せなければならなかったし、彼らの質問攻めにも遭いました。

「この場面はなぜ撮ったのだすか? あれは? あなたはスパイですか? この写真で何をするつもりですか?」私は彼らがテープをすべて持っていくと思ったんですが…また、写真はどこにあるのかと尋ねられそうで…」「フィルムに関しては何と言ったんですが?」「もちろんちょっとした言い訳を考えていましたよ。ラオスで国境守備隊をだます時も通じましたからね。ここでも通じるだろうと思ったんです。何かと言うと、撮ってもいない写真に火をつけるのです。そして私は『このバカどもめ、お前らのせいで私の写真はすべて駄目になったではないか!」と大騒ぎすれば良いのです』だから、万が一の時はラオスで使った方法で対処しようと思っていましたよ」

僕たちはこの一件について各自の見解を述べた。ニコラスはキム先生が2年前のオーストラリア作家事件を挽回するために、スパイを捜し出そうとしていると話した。そしてソク同志がスパイを捜し出そうとする理由は昇進するためだというのだ。

僕を招請した人が高位職にいたので僕は運が良い方だった。西側で北朝鮮映画を紹介する変わった西洋人を捜し出したのは、そう、高位職のペク先生だった。チェ先生は単なる通訳に過ぎず、特に重要な人物でない。彼女はただ外部から来た人に興味があるだけだ。

それで僕は気楽に過ごすことができたし、ニコラスを助けることができる位置にもあった。ところで、僕の考えは、ニコラスは少し危険な人々と関わりがある人物だ。ソク同志は西ヨーロッパとの取り引きを担当していて、パリにも何度も行ったことがあり、おそらく放蕩な生活をしていただろう。だが、パリから帰ってくる時に、彼は何の成果もなかった。それでペク先生が私を招く際にニコラスも招いたのだが、実際ニコラスはソク同志が考えていたような人ではなかった。ソク同志はニコラスを映画の配給業者だと考えていた様だ。ソク同志は大変、慌てたであろう。もしかしたらペク先生に叱責されたかもしれない。

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実は、朝鮮映画輸出入社は僕たちの費用を一切援助していない。その上ニコラスはカメラを持ってあちこちで問題を起こし始めた。それを見てキム先生もただ怖くなったのだろう。前回も似た訪問客のせいで大変な苦労をしたからだ。ニコラスはただ単に観光客の様に写真を撮ったのではなく、本を出版する予定で北朝鮮を訪問した。 だが、ここは北朝鮮なので、それが認められなかったのだ。ニコラスと僕は意見が一致したことが一つあった。キム先生は怖気づいていたし、とても詳細に報告書を書くソク同志は、目的の為にはどんなことでもする人だ。僕たちが警察へ行く様な事がなければ、大きな危険はないだろうということである。ただ僕たちが何かを感じるとしたら、単に自宅軟禁状態のような圧迫感と、全ての行動に制約がある負担程度だろうか。

朝鮮民主主義人民共和国の開国日であり国家記念日を迎えた。しかし、僕たちには休日ではなかった。 やはり休日も平日と相変わらず、突撃隊の精神で一日中映画を見た。映画で、または道路でも突撃隊をしばしば見た。常に制服姿の青年突撃隊が橋や道路、建物を建設した。

その中でも僕は可愛い制服を着た突撃隊少女が気に入った。『突撃隊精神! 休日なし! さらに多くの映画を!』おっと、冗談がちょっと行き過ぎたか…。実は映画輸出公社には、このような精神はあまりないようだった。彼らは映画が一本が終われば休息した。また、上映の途中に時々停電になることがあった。「これは米帝国主義者のせいなんです」と、チェ先生が説明した。「私たちはあいつらのせいで原子力発電所も作れないのです。彼らは軽水炉を建設すると約束したにもかかわらず、未だに何も作ってくれないのです。」