市外局番が「03」で始まる東京エリアの電話番号が8桁化したのは1991年のことだが、前年からテレビやラジオのCM、新聞広告、チラシなどでしつこいほどの広報が行われた。電話番号の変更は社会に与える影響がそれほど大きいということだ。

ところが、北朝鮮では変更が実に頻繁に行われている。わかっているだけでも、この10年間で3回も変更されているが、北朝鮮当局はまたもや変更しようとしているようだ。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、当局は最近、「電話番号を変更する」との理由で固定電話の使用を禁止した。あまりにも突然だったため、混乱が広がっているという。

北朝鮮ではもともと、高級幹部を除く個人宅への固定電話の設置は認められていなかったが、平壌では1990年代末、地方では2000年代初頭から認められるようになった。2010年ごろからは、ビジネス目的で固定電話を設置する人が増えた。その理由は、携帯電話より通話料が安いからだ。

そして利用者の増加は、番号変更で困る人が増えることを意味する。実際、固定電話ばかりを使っていた商人は、今回の電話使用禁止令にほとほと困り果てている。

他の地域から品物を仕入れていた業者は、取引先の担当者の固定電話に連絡していたのだが、今回の措置で連絡が取れなくなり大慌てだ。そこで、友人・知人のネットワークを総動員して、なんとかして携帯電話の番号を探り出そうとしているという。

また、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、現地の市場では、平壌郊外の平城(ピョンソン)の市場の商人と連絡がつかずに慌てている人が多いという。

通話料の安さに惹かれて固定電話でやり取りをしていたのだが、今回の措置で連絡が取れなくなり、必要なときに商品を調達できない状況に追い込まれている。

一部の国営企業からは、「このままでは携帯電話も使えなくなるのでないか」「わが国は他の国に比べて仕事が何でも遅いから、半年は使えないのではないか」との懸念の声が上がっている。待っていても埒が明かないため、独自の対策を進める人が多い。

しかし、電話業務を管轄する逓信局に問い合わせても「給料ももらえないのに誰が熱心に仕事なんてするもんか、仕事なんて悪く言われない程度にしかやらない」との答えが返ってくるだけだったという。

情報筋は、今回の電話使用禁止令と電話番号変更の背景には、昨今の電話帳の国外流出があると見ている。

国家保衛省(秘密警察)は、昨年から今年にかけて、電話帳を国外に流出させようとした人々を逮捕した。それ以降「別に大したものではないのに、外国から興味を持たれたものは何でも重要書類にするという訳の分からない状況」(情報筋)になったというのだ。

北朝鮮の電話帳には、様々な国家機関の番号が記載されている。例えば、韓国の中央日報が2004年に入手した電話帳には「人民武力部対外事業局:321−4987、労働新聞南朝鮮部:322ー2728」という具合に、公に存在を公表していない部署や、組織の全体像までわかってしまうのだ。そんな番号をなぜ掲載するのかは不明だが。

ある脱北者は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューに、電話番号を調べるために逓信局の局長にワイロを払って見せてもらうと語っている。本来は、それほど厳重な扱いをされているのである。

ところが、そんな電話帳を海外に売って一儲けしようとする人が後をたたないようだ。

今まで、北朝鮮当局が固定電話の番号を変更したのは、わかっているだけでも2008年、2011年、2013年の3回ある。ある平壌市民は、RFAの取材に「よく変わるから、今まで何回変わったかは覚えていない、だいたい年に1回は変わっていると思う」と語った。

また、番号変更による混乱を防ぐためか、今までは国の行政機関や企業などの番号は対象から外されていたが、今回はそれらの一部も変更の対象となっているもようだ。もはや電話番号としての意味をなさない状況と言えよう。

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