しかし、この様な文化は金正日体制と90年代の『苦難の行軍』を経て、大きく変質した。苦難の行軍の当初は(1995〜96年)幹部の自尊心と誇りが少しは残っていたと記憶している。
正確な統計を確認することはできないが、当時は一般の国民と党員や幹部との餓死の割合に大きな違いは無かった。党員と幹部は人民よりもより堅固に党と国家を信頼し、『党員の名誉』を維持するためには武士は食わねど高楊枝を貫いていた。
しかし、金正日式『1人忠誠主義』が広がり、2000年代には物質万博蜍`によって金と物質に対する幹部の欲望は止まる事がなくなった。物欲が名誉欲を追い抜いた。特に、北朝鮮当局の供給能力が地に落ち『年老報奨金制』の運営が中断され、運営されていたとしても急激な物価の上昇により魅力が失われていた。
そして幹部は2000年代以降、金に向かって走り始めた。金は権力の副収入でない、権力への動機に変わった。これと共に幹部の保身主議も目に見えてに増えた。
80年代には幹部の保身主義は『目立った失敗をせず定年で退任しよう』という程度だったが、2000年代の保身主義は『上級幹部から嫌われなければ、何をしてもかまわない』という積極的な日和見主義が現れた。法や道徳は考慮対象ではなかった。上級幹部にさえバレなければ、それで万事がOKであった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面80年代までは、更迭などの主な原因が女性関係や生産目標の達成失敗などの職務上の過失であったが、2000年代以降は主に麻薬、密輸、公金の横領など経済的な不正が多くなった。
幹部の不正の増加と上級幹部に対する依存と忠誠は正比例していく。信じる物は上級幹部しかないからだ。
彼らは金正日や上級幹部の権威を立てる要領、中央党の集中検閲を避ける感覚、政敵の攻撃を事前に交す準備、法の網を避ける能力などで他の追従を許さない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、幹部の保身は親戚や知人への人間不信として現れる。自分の地位をねらる相手は無数。もしかすると親戚や知人の裏切りによって地位が危ぶまれる可能性がある。なので人間関係を冷徹に処理しようとする傾向があり、新造語で地位が高まるほど冷酷になるとも言われている。
保身主義と不正が蔓延している中で、政敵の除去や政治的な犠牲者が必要な場合も、『不正』が定番メニューとして登場する。
昨年の貨幣改革の失敗の責任をとわれ3月に銃殺された朴南基・労働党財政経理部長も『貨幣改革の直前に情報を側近に流し、大量の旧貨幣をドルの確保など非合法的に個人財産を増やした』という罪目が追加されたのが代表的な事例だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、逆説的にも幹部の保身主義で最も大きの被害を受けている人金正日だ。上級幹部にだけ良く見せ金儲けにしか興味が無く、金正日の指示を誠心誠意をもって執行する者は皆無だ。結果的に保身主義に陥った幹部が『首領の権威』を深刻に傷つけた。また、不正が人民によって迄Iされる場合、住民の反発が金正日に向かう。
2000年代初めまでは多くの住民は「幹部は悪人で、将軍様まで騙している」と話した。金正日が国政に力を入れているが、中間幹部が従わないと言われていた。しかし、幹部の不正と無狽ェ長期化され、今では「将軍様はなぜあんなやつらを官僚に居座らせているのか」と話している。
これまでは体制の維持の核心だった幹部が、今では自らを蝕む病となったのだ。20年以上に渡って保身主義に漬かりきった幹部層が、いつ金正日を裏切るのだろう。1つだけ明確なのは、その時が迫ってきていると言うことだ。