韓国は、日本同様に酒に対して寛容な社会だった。酔って騒いでもさほど問題にならなかったが、最近は様子が変わりつつある。忠清北道警察庁は2010年、酔って暴れたりする者を「酒暴」と名付け、取り締まりキャンペーンを繰り広げたことをきっかけに、酒の上での暴力などに対する社会的視線が厳しくなった。また、飲酒運転についてはかなり前から厳しい。

酒飲みは北朝鮮を滅ぼす

一方の北朝鮮では、酒を飲んで騒いだりすることを「酒風」(スルプン)と呼び、当局は取り締まりや教育を繰り返している。酒を飲むことは、「社会主義的生活気風」に反し、国や社会を崩壊に至らしめるというのだ。

韓国で北朝鮮向け放送を行っている自由北韓放送は、北朝鮮の朝鮮労働党出版社が2005年9月に発行した7ページの文書を入手した。文書は、酒に関する誤った習慣を指摘している。

こんな酒の飲み方は間違っている

◯客の接待、病人の見舞いには酒が欠かせないという習慣

◯手術をしてもらった後に、医者に酒や食事を振る舞う習慣

◯時と場所を選ばず飲み会を行なう習慣

◯肉体労働、動員、出張、訓練の後に酒を飲む習慣

◯酒を飲みながら賭博をする習慣

◯業務時間に飲み会を行なう習慣

そして、旧ソ連は1985年5月に禁酒令を出したが徹底できず、後のソ連崩壊につながった、酒風を放置すれば北朝鮮の体制とて例外ではないとし、酒風根絶を訴えている。

 

酒量の多さが男の器の大きさ

北朝鮮では、生活と食事に酒が密接に関係している上に、「酒量の多さが男の器の大きさを示す」という考えが根強い。さらに、娯楽が乏しく統制の厳しい社会であるため、「酒でも飲まなければやってられない」と考える人が多いのだろう。そこに加えて、市場経済の活性化が飲酒を煽っている側面がある。

北朝鮮では、多くの人がトウモロコシ、ドングリ、おがくずなどで作った「ノンテギ」「モジュ」などと呼ばれる密造酒を作っている。

例えば咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)の場合、マンション1棟あたり1〜2戸が密造酒を製造している。大きな市場のある水南(スナム)区域や、松坪(ソンピョン)区域の康徳洞(カンドクトン)では、約8割の住民がモジュと呼ばれるドングリ酒を密造している。

酒の密造は違法行為であるため、保安署(警察署)が取り締まりを行っている、しかし、北朝鮮ではアルコール測定器が普及していないため、取締官は見た目と臭いで判断する。

取り締まりを免れた密造酒は、市場で販売される。アルコール度数は30度から60度という非常にきつい酒だが、水で割って度数を20〜25度まで下げて安く売ったりもする。朝鮮半島では元々、このようなきつい酒が好まれてきた。

国営工場が製造している平壌焼酎は25度、ブルーベリーの一種「トゥルチュク」(和名クロマメノキ)で作ったトゥルチュク酒は40度。一方、韓国で作られている真露(ジンロ)は、1924年の発売当初35度だったが、今では16.9度まで下がった。韓国では、生活習慣の変化で度数が徐々に下がっていったが、北朝鮮は昔のままというわけだ。ちなみに、国営工場で製造した酒はほとんど市場に出回らない。

飲酒運転で権力を見せつける警察や検事

きつい酒が好まれるだけあって飲酒運転による事故も多いが、さほど問題になることはない。それもそのはず、車を運転できるのは一部の幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)に限られているからだ。

その上、検察所の検事、保安員(警察官)は、権力を見せつけるために、昼から酒を飲んで泥酔状態で運転するという。取り締まる側が飲酒運転をしているのだから、減るワケがないのだ。

韓国では、酔っ払った人が警察官に暴言を吐いたりすることがよくあるが、北朝鮮ではまずありえない。もしそんなことをすればどんな目に遭わされるかわからないからだ。暴力を振るわれた上に、何日も勾留されるおそれがあるからだ。

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