悪名高き北朝鮮の治安機関の恐喝まがいの取り締まりが、一人の「愛国者」を「裏切者」に変えた。
北朝鮮は世界でも類を見ない監視国家だ。上からの監視のみならず、住民同士を互いに監視させ、少しでも「異常」な言動が見られれば、すぐに当局に報告される仕組みが築かれている。この監視システムを支えるのが警察にあたる人民保安省(保安省)であり、秘密警察の国家保衛省(保衛省)だ。
とりわけ保衛省は、拷問、処刑などの人権侵害が常態化している強制収容所も運営しており、住民から恐れられている。
(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も)平安北道(ピョンアンブクト)の定州(チョンジュ)で生まれ育った女性のAさんは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に引っ越して20年間暮らした。そして2015年の夏に脱北し、その翌年に韓国にやって来た。