韓国の国家情報院(国情院)は1日、北朝鮮の金正恩党委員長の体重が130キロと見られるとの分析を示した。
国情院はこの日、韓国国会で開かれた情報委員会の懸案報告で金正恩氏の体重について、「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」と明らかにした。
恐怖政治のストレスか
昨年、高麗大学の研究チームが調査したところでは、30代の脱北者の男性は平均身長が166.5センチ、平均体重は62.8キロだった。身長171センチと見られる正恩氏の体重は、同世代の北朝鮮男性の2倍を超えることになる。
一体、どうしてこんなに太ってしまったのか。
独裁者として贅を尽くしていることが肥満の原因とも思われるが、正恩氏の場合、父の正日氏から権力を継承するに際し、指導者として威厳を出すためにあえて肥満体型に「改善」したようだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ただし、最近の太り具合はちょっと異常かもしれない。
もともと太目だった正恩氏の体型の変遷を検証すると、2013年8月あたりから本格的に太り始める。そして、2014年からさらに拍車がかかるわけだが、筆者は、この時期に注目する。
(参考記事:【写真で振り返る】金正恩氏、年々高まる肥満度…髪型にも変化が)2013年8月というのは北朝鮮の芸術関係者に対して「ポルノ疑惑」がもたれ、粛清がはじまったころだ。この粛清の波は、2013年12月の張成沢氏の無慈悲な処刑で嵐となり北朝鮮国内で吹き荒れる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏が、粛清という刀を振り回し暴走しはじめた時期と、急激に肥満度が高まる時期が一致するのは偶然とは思えない。恐怖政治を激化させる中で、なんらかの猜疑心やストレス、プレッシャーにさい悩まされたことが極度の肥満をもたらした可能性は充分にある。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」……残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)国情院も今回の報告で、不眠症や身辺の脅威のために暴飲暴食に走り、成人病にかかっている可能性を指摘した。
しかしそもそも、それは自分のまいた種だ。北朝鮮国民は誰も、「恐怖政治をよろしく頼む」などとは言っていない。「核兵器を作ってミサイルを飛ばしてくれ」などとも考えていない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面もちろん、朝鮮半島情勢の緊張は正恩氏が祖父と父から受け継いだ「負の遺産」であるのも事実だが、世界が正恩氏に求めるのは、対立を終わらせる方向へ勇気を持って家事を切ることだ。
それなのにまったく逆の方向に行くから、米国などから「斬首作戦」などの脅しをかけられるのだ。
正恩氏は自分の身の安全と、北東アジアの平和と安全がつながっていることを、早く理解した方が良い。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。