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90年代の「苦難の行軍」時期に多く現れたストリートチルドレン、「コチェビ(注)」たち。両親を亡くしたり、捨てられたコチェビたちは、市場の周辺で物乞いをしたり、国境の川(豆満江)を越えて中国で生き延びてきた。

そんなコチェビたちの姿が、町中や市場からすっかり見られなくなった。実は、北朝鮮当局がコチェビたちを強制収容しているという。

コチェビを強制収容 施設に移送して食事支給

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、次のように伝えてきた。

「最近、市場からコチェビの姿が消えた。1人でも現れたら当局がすぐさまとっ捕まえて強制収容しているからだ」

「コチェビたちは『放浪者宿所』に集められた上で『初等学院』と呼ばれる施設に移送される。一日3食を与えて勉強まで教えている。この初等学院の教師を募集している地域もある」

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こうしたコチェビに対する厚遇の背景には、金正恩体制のある思惑があるという。

国際社会の批判、「古き良き時代」への回帰

一つ目は、国際社会からの批判だ。やせ細った多くのコチェビの姿は、北朝鮮庶民の手によって撮影され、全世界に発信されてきた。そして国際社会からの非難を招いてしまった。

「正恩氏は、海外からコチェビについて非難されたことからプライドが傷つけられ解決しようとしている」(内部情報筋)

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また、祖父の金日成氏の統治を踏襲しようとする正恩氏の思惑も絡んでいるようだ。

「首領様(金日成氏)の時代には『子どもは国の王様、宝』と言って大事にされていた。元帥様(正恩氏)もそれを踏襲しようとしている」(内部情報筋)

昨年5月、コチェビだった脱北青少年9人がラオスから北朝鮮に強制送還される事件が起きたが、これをきっかけにコチェビへの管理が強化された。

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「国際社会に『我が国には飢えたコチェビなどいない』と宣伝するため、手厚いサポートまでしながら、なんとかコチェビの存在を隠そうと躍起になっている」(内部情報筋)

持続的なケアがなければ問題解決は難しい

こうした施策は、全国的に行われているが、中央からの支援は受けられない。よって地域住民から徴収した支援金で運営されていると内部情報筋は伝えている。

「配給が行われているのは平壌の愛育院、育児院だけで、地方にある施設は何の支援も受けられない。支援に必要なお金は住民から徴収されるので不満が高まっている」

こうした北朝鮮当局の場当たり的な施策に対して、高位級幹部だった脱北者はあまり効果はないと指摘する。

「中央からの支援がなければ、結果的に生活費を稼ぐために子どもたちに仕事をさせるケースがある。そうした事から逃れるために、施設を脱走して市場に戻るコチェビたちも多かった。持続的に支援するシステムを構築しなければコチェビ問題の解決は難しいだろう」

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(※)コチェビ
北朝鮮のホームレスのこと。ストリートチルドレンだけでなく、ホームレス全般を意味する。かつは「コチェビ」とも言われていたが、語源は「流浪」や「さすらい」を意味するロシア語「コチェビエ(кочевье)」に由来していることから正しくは「コチェビ」である。

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