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北朝鮮には、人民班という制度がある。町内の20〜40世帯をまとめる北朝鮮の監視体制の末端を担っている組織で、日本の隣組に似た制度と言えよう。しかし、人民班は住民を監視するという役割と同時に、権力から住民を守るという役割も担っている。

そのトップを務めるのが人民班長だが、北朝鮮では唯一、民主的な選挙で選ばれる存在だ。そんな班長の役割について咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が説明する。

この情報筋が住む人民班では最近、当局による非社会主義(当局が考える社会主義にそぐわない行為)に対する検閲(査察)が行われた。しかし、班長が自分の家族や町内の子どもに「検閲団が来た」と触れさせて回ったので、住民が韓流ドラマのソフトなど違法なものを隠したため、「被害」はさほどなかった模様だ。班長が、機転を利かせて当局の横暴から住民を守ったケースだ。

通りの美化事業から農作業に至るまで、ありとあらゆることを動員で済まそうとするのが北朝鮮の特徴だが、その掛け声をかけるのは人民班長だ。

信頼されている人民班長は、毎朝行われる動員作業の前に、町内にある鐘を鳴らすだけで住民が集まるが、信頼されていない人民班長は、家々をノックして回っても誰も出てこようとしない。

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もし国に選ばれた人民班長が送り込まれたとしても、住民は「なんであんな人の言うことを聞かなければならないのか」と考え、言うことを聞こうとしない。それで当局も住民の民意に基づいて選ぶ形を認めざるをえないのだという。また、人民班長も住民の役にたたなければ、引きずり降ろされてしまう。

人民班長は、住民の動向を詳しく把握しているだけあって、役割分担の調整役も担っている。

「最近、会寧(フェリョン)と大徳里(テドンリ)間の道路の石垣補修工事に動員されたが、幹部が車を出し、カネ持ちが酒と食事を提供したおかげで、作業が楽に終わった」

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人民班長は、権力を持った人には物質的な支援をさせて、権力のない人には力仕事をさせる。

そんな「顔役」の人民班長との関係を良好に保つのが、北朝鮮生活の基本だ。幹部やカネ持ちの商人とて例外ではない。関係がこじれて睨まれれば、幹部と言えども町内から追い出されかねないのだ。

家を買う前には、物件や立地の良し悪しも見るが、同時に人民班長がどうかを見極める必要がある。班長が無能ならば、住民は団結できずご近所トラブルも増加する。そんな町内にある物件は、自然と家賃が下がるというのだ。つまり、家主にとっても班長選びは非常に重要だ。

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政府は、人民班長に現金やテレビなどを贈り、反政府的な動きや違法行為を報告するという「本来の役割」に忠実になるように懐柔しているが、あまり効果はないようだ。熱心に報告したりすれば、住民から睨まれるからだ。