国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議2397号と新型コロナウイルスの影響で停滞していた北朝鮮労働者の中国流入が、再び本格化する様相を見せている。これまで北朝鮮労働者は小規模に中国へ入国していたが、数百人単位での入国が確認されたのは異例とみられている。
デイリーNKの対北朝鮮消息筋によると、今月12日午前7時ごろ、北朝鮮労働者約200人が平安北道・新義州を出発し、中国遼寧省・丹東に入国した。彼らはバスで丹東入りし、所持していた荷物は同日午後5時ごろに別途運搬されたという。北朝鮮労働者は12日から16日までの間、連日100~200人規模で丹東を通じて中国に入国しており、5日間で約1000人に達したとみられる。
消息筋は「今回丹東に入った北朝鮮人材は、遼寧省内の衣料工場や食品工場、水産加工工場に派遣された」とし、「今後も約1か月間、毎日数百人規模の北朝鮮人材が丹東経由で中国に入る可能性がある」と伝えた。
今回の動きは、2017年に採択された国連安保理決議2397号以降、事実上途絶えていた北朝鮮の海外派遣労働が再開する兆しと受け止められている。同決議は海外にいる北朝鮮労働者の送還を明記しており、その後はコロナ禍も重なり、中国への大規模な流入はほとんど見られなかった。
これまでも数十人規模の労働者が非公式ルートで中国に入国していたとされるが、今回のように数百人単位で連日入国が確認されたケースは異例だ。
ただ、これらの労働者は正式な労働ビザを取得して入国したわけではないとされる。多くは短期訪問や産業研修生の名目で入国しており、表向きは労働者ではないが、実際には労働に従事する形で派遣されている。書類上は短期滞在者や教育目的の入国者として扱われるため、制裁違反を回避するための手法とみられる。
こうした大規模な流入の背景には、北朝鮮と中国の関係改善の流れが影響している可能性がある。最近は高官往来や人・物の移動再開を契機に、両国関係が明確に改善基調にある。
(参考記事:習近平を”公開侮辱”した北朝鮮「やっぱり中国が大事」と姿勢転換)
先月には旅客列車や航空便が相次いで再開されたほか、今月9~10日には中国の王毅外相が訪朝し、金正恩国務委員長と会談。両国関係が外交的表現の域を超え、実質的な協力段階に入りつつあるとの見方も出ている。
とりわけ中国の労働集約型製造業では安価な北朝鮮労働力への需要が根強く、中国当局が新規労働者の大規模な受け入れを容認した可能性も指摘される。
消息筋は「安価な労働力を必要とする丹東の多くの工場は北朝鮮労働者を望んでいる」とした上で、「今後2~3か月以内に、丹東を通じて中国に入国する北朝鮮労働者は1万人規模に達する可能性がある」との見通しを示した。
