中東情勢が再び緊迫の度を増している。2月28日、米国と同盟国による大規模な対イラン軍事攻撃が実施され、イランも報復に踏み切った。核開発を巡る緊張が一気に軍事衝突へと転化した今回の事態は、北朝鮮の金正恩総書記がかねて強調してきた「核の実戦使用」論の危険性を改めて浮き彫りにしている。
昨年6月、デイリーNKの北朝鮮内部消息筋は、金氏がイスラエルとイランの軍事衝突を「帝国主義勢力と主権国家の典型的対決」と位置づけ、イランの弾道ミサイルによる報復を「戦略的模範」と高く評価したと伝えていた。金氏は党幹部協議の席で、核兵器は「保有」するだけでは不十分で、「脅威を受ければ、地球上のどこであれ必ず核で報復する」と明言。核戦力の実戦運用性と指揮体系の強化を直接指示したという。今回の対イラン攻撃と報復の応酬は、こうした金氏の認識をさらに補強する形となった。特に金氏は、イランが核不拡散条約(NPT)体制下にありながら先制攻撃を受けた点を重視し、「核を持たない国は最終的に攻撃対象となる」との教訓を引き出しているとされる。北朝鮮が2003年にNPTを脱退し、核開発を加速させた路線の正当性を、今回の事態が証明したとの論理だ。
内部では、金氏が核戦力の「生存性」と「自動報復体制」の構築を最優先課題として掲げ、核施設の地下化・分散化、指揮系統の独立性確保、サイバー攻撃や電波妨害への耐性強化など、実戦を前提とした再整備を命じたとの証言も出ている。核の「保有」から「使用」への発想転換が、すでに北朝鮮の軍事ドクトリンの中核に据えられつつあることを示唆する。
(参考記事:イランが「米空母撃沈も」と豪語する、北朝鮮製の”小さな潜水艦”)
28日の対イラン攻撃は、中東だけでなく、朝鮮半島情勢にも直結する警鐘と言える。金正恩体制が今回の事態を「核武装こそが体制を守る唯一の道」と受け止めれば、核・ミサイル開発の一層の加速と、先制使用を含む強硬姿勢の正当化が進むのは避けられない。国際社会にとって、北朝鮮の核問題が新たな段階に入りつつある現実を、改めて突き付けられた形だ。
