金正日総書記の生誕日(2月16日)を控え、北朝鮮当局が権力機関や軍部隊、炭鉱などに小麦粉の供給を行っていることが分かった。だが、一般住民の間では「小麦粉よりもコメが先だ」との不満が広がり、当局の食糧政策と現実の生活との乖離が改めて浮き彫りになっている。
咸鏡南道咸興市の消息筋によると、最近、ロシア産の小麦粉が大量に輸入されたとのうわさが広がり、党機関、保衛・安全機関、軍部隊、炭鉱といった主要機関を中心に、小麦粉が市場価格の半額以下で供給されている。庶民を対象とした配給も通達されたが、具体的な日程は未定で、住民の期待と不安が交錯している。
しかし、現場では歓迎の声よりも不満が目立つ。住民の間からは「権力機関はもともと生活に困っていないのに、いつも優先される」「こういう時こそ一般家庭に先に配るべきだ」との声が相次ぐ。さらに「朝鮮人はやはりご飯を食べてこそ力が出る。小麦粉よりもコメを輸入すべきだ」との指摘も多い。
不満の背景には、供給量の少なさもある。今回配られた小麦粉は1世帯当たり平均約5キロにとどまり、数日分の揚げ菓子やチヂミを作る程度に過ぎないという。住民からは「祭日の料理用にはなるが、日常の食事には回らない」と冷ややかな声が上がる。
(参考記事:「迷惑だ」プーチンからの贈り物に北朝鮮国民ブチ切れ)
金正恩国務委員長は2021年、人民の食生活改善を掲げ、白米と小麦粉中心の食文化への転換を打ち出した。だが、長年にわたりコメとトウモロコシに依存してきた食習慣を短期間で変えることは難しく、慢性的な食糧不足の中で、政策と実態の隔たりは埋まっていない。
一方、今回輸入された小麦粉の相当量が、住民配給ではなく食品工場の原料用に回され、菓子やパンの製造・販売を通じて外貨や国家収益を確保する狙いがあるとの見方も出ている。住民からは「国家の収入より、まず人々の食卓を満たすべきだ」との切実な声が漏れている。
慢性的な食糧難が続く中、記念日に合わせた一時的な配給では、住民の不満と不安を解消するには程遠い状況が続いている。
