韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権が、地域の緊張を高めない範囲で軍事協力を活用する「実用外交」を本格化させている。日本とは1月30日の国防相会談で捜索・救難共同訓練(SAREX)の再開に正式合意する一方、中国とも1月下旬から2月初旬にかけて、人道協力を軸とする捜索救難分野の協力再開に向けた実務協議を進めており、対立と協調を巧みに使い分けるしたたかな外交姿勢が鮮明になっている。

日韓両国は1月30日、ソウルで行われた国防相会談で、海軍によるSAREXを約9年ぶりに再開することで合意した。SAREXは1999年に始まり、海難事故などを想定した人道目的の訓練として隔年で実施されてきたが、2018年の自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題や旭日旗を巡る対立を背景に中断していた。今回の再開合意は、冷え込んだ防衛協力の正常化に向けた象徴的な一歩と位置付けられている。

李政権は同時に、中国との関係管理にも力を注ぐ。韓国国防部によると、1月下旬以降、韓中両国の国防当局は局長級の協議や実務協議を通じ、黄海や東シナ海における海難事故への共同対応や捜索救難分野での協力再開について意見交換を続けている。現時点で正式合意には至っていないものの、「軍事的緊張を高めない範囲での人道協力」という原則の下、SAREXに準じた訓練の実施も検討対象となっている。

こうした動きは、李大統領が掲げる「国益中心の実用外交」を色濃く反映する。米韓同盟を外交・安全保障の基軸としつつ、日米韓協力を実務面から強化する一方、中国との関係悪化を回避し、経済・安全保障両面でのリスクを最小化する狙いがある。尹錫悦前政権の対米・対日重視路線を継承しつつも、対中関係においては緊張管理をより重視する姿勢が特徴だ。

とりわけ軍事協力の扱いは慎重である。日本とのSAREX再開は、北朝鮮の核・ミサイル開発が続く中、日米韓の抑止力を補完する実務協力と位置付けられる。一方、中国との協力は、あくまで人命救助や事故対応といった非軍事分野に限定し、対中包囲網への参加との印象を与えないよう配慮されている。

背景には、米中戦略競争の激化と台湾海峡情勢の緊張がある。中国に対する経済依存度が依然として高い韓国にとって、対中関係の急激な悪化は経済安全保障上の大きなリスクとなる。一方で、北朝鮮問題への対応では、米国や日本との連携強化が不可欠であり、外交的なバランスが常に問われている。

韓国政府関係者は「軍事協力を通じて信頼を積み上げつつ、緊張を招かない線を見極めることが重要だ」と語る。1月30日の日韓合意と、1月下旬以降に進む韓中協議は、その両立を図る李政権の戦略を象徴する動きといえる。

理念よりも現実、対立よりも管理を重視する李在明政権の外交は、東アジアの不安定な安全保障環境の中で、したたかに国益を追求する試みとして注目されている。