北朝鮮がロシアから高価な馬を継続的に輸入している実態が明らかになった。米国の北朝鮮専門メディア「NKニュース」によると、ロシアの種馬農場は2019年以降、約100頭の馬を北朝鮮に輸出しており、金正恩一族や特殊部隊向けとみられている。1頭あたりの価格は高額で、慢性的な食糧不足に直面する住民の生活実態とはあまりにもかけ離れている。

これらの馬は、金正恩氏の偶像化演出に使われてきた。今後、娘の金ジュエ(主愛)氏が白馬に乗る場面が公開される可能性もある。あるいは、その演出を見据えて馬を輸入している可能性も否定できない。

北朝鮮の関係者は昨年、ロシアを直接訪問しており、馬の輸入は一時的なものではなく、計画的・継続的に行われてきた可能性が高い。特に注目すべきは、2020年のコロナ封鎖下での輸入だ。当時、北朝鮮は生必需品を含むほぼすべての貿易を遮断していたが、北露間の鉄道輸送が再開された際、最初に運ばれたのは食糧ではなく馬だった。制裁と封鎖が重なり民生が深刻な打撃を受ける中で、最優先されたのが指導者一族の象徴演出だった事実は重い。

国連制裁は北朝鮮へのぜいたく品輸出を禁じており、高価な馬も例外ではない。それにもかかわらず輸入が続いてきたとすれば、制裁体制の形骸化も改めて問われる。だが何より深刻なのは、飢えに苦しむ住民を顧みず、白馬に乗る姿で権威を誇示し続ける金正恩体制の姿勢そのものだ。これは「国家指導」ではなく、封建的な特権階級による自己陶酔にすぎない。馬上の演出が華やかであればあるほど、その足元で切り捨てられてきた民衆の現実は、より残酷に浮かび上がっている。