金正恩総書記の実娘・金ジュエ氏が、重要行事の写真で明確に「センター」に配置された。北朝鮮の偶像化、とりわけ写真報道においては、最高指導者が最前列センターに立つという原則が絶対とされてきた。金正恩時代に入ってから、例外的な構図が見られることはあったものの、重要行事ではこの原則が厳格に守られてきた。

その原則を破ったのが、金ジュエ氏である。2025年以降、金正恩氏より前に立ったり、より大きく映る構図は散発的に確認されていたが、2026年1月1日、明確にセンターに据えられた写真が複数、公式に公開された。

さらに注目されるのが、錦繍山太陽宮殿での写真だ。同日、ジュエ氏は金正恩氏に同行し、金日成・金正日の遺体が安置される同宮殿を初めて参拝したが、ここでもセンターに配置された。錦繍山太陽宮殿は、単なる追悼施設ではない。国家の正統性を体現する聖域であり、誰がどこに立つのかは、厳密に演出される政治メッセージである。これまで中心に立つことを許されてきたのは、金正恩氏だけだった。

金ジュエ氏が初参拝にもかかわらずセンターに置かれたことは、家族演出の範疇を超える異例の措置だ。むしろ、体制が意図的に発した後継シグナルと見るのが自然だろう。

(参考記事:「金正恩の娘は国産の服を着ろ」反発強める北朝鮮の若者たち

金日成を始祖とし、金正日、金正恩へと受け継がれてきた「白頭の血統」は、北朝鮮政治において単なる家系ではない。革命の正統性を担保する、絶対条件である。しかし金正恩氏は2023年以降、錦繍山太陽宮殿参拝を軽視するようになり、金日成・金正日関連の報道も意図的に減らしてきた。その狙いは明白だ。すなわち、白頭の血統を「金正恩の血統」で上書きし、再スタートさせることである。

この文脈で読み解くと、金ジュエ氏の初参拝とセンター配置写真の意味は、一層鮮明になる。金正恩時代に上書きされた白頭の血統は、次に金ジュエ氏へと引き継がれていく――そのメッセージである。現時点で正式な後継者と断定するのは早急かもしれないが、これらの演出が偶然でないことは明らかだ。2026年は、金ジュエ氏の動向から目が離せない年となりそうだ。